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雲竜瀑トレッキング

栃木県大谷川上流部

2005.02.26





Text & Photo  : 高野 智

 「雲竜瀑を見に行こう」いつものメンバーの掲示板からこの話が始まったように思う。誰が言い出したのかは最近ITボケの進んでいる私の頭からは思い出せない。毎日パソコンを使っていると思考能力が低下するのか? 間違いなく記憶力は低下している。漢字なんて読めはするけど全く書けない。なんせここ数年で字を書いたのは、住宅ローンの用紙に名前と住所を書いたくらいである。今や小学生の娘に漢字を教わるしまつ。

 そんな頭をリフレッシュするのと、全く運動してないダレ切った体に鞭を打つために雲竜瀑へ行くことにした。行くからにはもちろん写真を撮らなくてはと、デジタル一眼レフとレンズ数本、三脚をザックに仕舞う。日帰りのハイキングにしてはやたら重くなった。

 ナカナカを乗せ、駅で大ちゃんを拾い、東北道をひた走る。集合場所へは約束の時間を少し過ぎたくらいに着いた。すでにFunakiさんとしみたかさんはスタンバっていた。

 それにしても今日は出だしからツイてない。おつりは自販機の下に落としてしまうし(10円だけど)、待ち合わせ場所に入るところで曲がりきれずに生垣に突っ込みそうになるし。まるでこれからのことを暗示しているかのようだった。

 2台に分乗した私たちは車止め目指して出発した。日光東照宮入り口の交差点を右折ししばらく走るとすぐに林道に入った。林道は雪道となりどんどん登っていく。車止めにはほどなく着いたが、すでに数台の車が置いてある。そのうちの1台が今にも雲竜瀑へと出発するところであった。ヘルメットを被り、ピッケルを持ち、アイゼンを着けた、まさに猛者といういでたち。あの姿を見れば間違いなくベテランであり、あの人たちの後を着いていけば雲竜瀑に辿り着けると誰もが思うだろう。しかし、それが落とし穴だったのだ。

 彼らは二股に分かれた林道の右股を行った。何の疑いも無く着いていく私たち。しかし、すぐに林道は終点となり河原に飛び出してしまった。数日前に会員の紺野君が雲竜瀑に単独アタックをかけていた。事前情報だとラクチンルンルンコースで一箇所へつるところがあるが、あとは渡渉も一回程度で行けるはず。なのに目の前には大きな堰堤が立ち塞がり、どう見てもルンルンコースには見えない。先行者の猛者たちもどう越えようか悩んでいるようす。
 ここで右岸を巻くか左岸に渡渉して上の林道に上がるか悩むこと数分。大ちゃんは右岸を巻こうと主張し、ナカナカは絶対左岸を登ると意見が分かれた。残念ながらリーダー不在の即席チーム。結局二手に分かれて進むことに。
 右岸チームは大ちゃんが先頭でズリズリの凍土の斜面を登っていく。私は小心者なので「滑ったら下の河原まで落ちるよな。下までは5m以上あるから足折れちゃうかも」と次の一歩が出ない。今回滑り止めの類は何も持っていないので決心がつかずにいた。大ちゃんに続きFunakiさんも行ってしまった。私は1人おいてけぼりである。
 あまりの情けない姿に大ちゃんがザイルを降ろしてくれた。これで安心して登れるとガシガシ登る。
 大ちゃんが「シーズン中なら全然余裕ですよ。一発目だからキツかったんでしょう」と慰めてくれるが、いつでも同じことだろう。もし落っこちたらという考えが先に浮かんでしまう私だった。



 そんなこんなで一つ目の堰堤をクリアした私たち。しかし先にもまだまだ堰堤が控えている様子。結局左岸のガレを登りナカナカたちの待つ林道へ。

 さあこっからは楽勝だろうと思いきや、まだまだ難所は続くのである。渡渉でズッコケル者がいたり、深雪に足を取られてひっくり返る者がいたりと珍道中は続いた。もう先行者のトレースは無く完璧にルートをミスしている。
 深雪で膝までズボズボ潜りながら、堰堤が出てくれば高巻き、もういいかげん雲竜瀑は目の前だろうと思えたとき、渓はゴルジュとなり河原は消え、その先にはまた堰堤が出現。「いい加減にしろや」の気分である。「黒部の男」大ちゃんに巻けるかどうか偵察に行ってもらうのだが、大きくバツのサイン。
「スッパリ切れていて、とてもアカンわ」とのこと。










 雲竜瀑アタックはこの時点で敗退が決定した。しかし、誰も意気消沈しないのがこのメンバーのいいところか。雪崩の心配のないところでラーメンを食べ体を温めた後、下流にあった氷柱を撮影しに向かう。
 見事な氷柱は不思議な造形を見せる。崖上からつららのように伸びているもの。岩から染み出した水がギリシャ神殿の柱のようになったもの。流れのしぶきが凍りつき扇のような形になった氷など、人が作ろうと思ってもできないようなものばかり。
 時間のたつのも忘れ夢中になって撮影していたら、CFカードがあっという間に一杯になってしまった。




 満足のいったところで帰路についたのだが、林道歩きも結構しんどかった。九十九折れになってどんどん登っていくのである。車止めは下流にあるのだから下りのはずなのになぜ登らなきゃならんの?。ダレきった体はやはり悲鳴を上げた。あっというまに息が上がり足が動かなくなる。林道歩きも結構な時間が掛かったがどうにか車に辿り着き、お約束の温泉に入って解散となった。
 
撮影メインなら車降りてすぐのところじゃないとダメかもと思った私であった。


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