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妙義トレッキング

群馬県 表妙義

2004.08.07

瀬谷進一、中村敏之



Text & Photo  : 中村 敏之

 世間的には夏休みの時期になりました。私にとってこの時期は瀬谷さんと遊びに行く時期でもあります。(決まりがあるわけではないけれど、いつの間にかそうなった。)去年は奥鬼怒と秩父、一昨年は黒部と、この時期に瀬谷さんと遊ぶのは毎年恒例となった感があります。
 でも今年は釣りでなく山歩き、トレッキングです。何故今年はトレッキングなのかと言いますと、何でも瀬谷さんが出先で暇つぶしにアウトドア情報誌を読んだところ、今回行く妙義山のコースが紹介されており、更にそこは出張で何度も訪れたことがあるなじみの深い場所なのでいつか行って見たいと思っていたそうなのです。
 私的にはアウトドア情報誌から仕入れたネタというのがいまいち不安です。トレッキングとは言え山を歩くのですから、途中どのような危険があるかわかりません。できれば”山と渓谷”や”岳人”と言った専門誌の情報のほうが、その辺のことも載っていたりするので安心なのですが…。

道の駅より妙義神社方向を望む。中央の”大”の字は妙義神社奥社

 妙義山と言えば、関東在住の方ならば軽井沢・長野方面に行く途中でその奇怪な山容を目にしたこともあるかと思います。この山は山体の風化が進んでおり、山の上部は切り立った岩場と巨岩・奇岩が累々と積み重なる一風変わった山です。そのせいで山の上部を巡るコースは、険しい鎖場が連続する上級者向けのコースとなっています。我々は山歩き初心者ですから、もちろんそんな険しいコースを歩くはずも無く、初心者向けの山腹を辿る”関東ふれあいの道”を行きます。

 着替えを済ませたあと、コースのスタート地点である妙義神社へ向かいますが、神社は山の中腹にへばりつくように建っており、社殿への石段は長く急なものとなっています。お陰でトレッキングが始まる前から汗まみれになってしまいました。ですがその道は杉の巨木が林立しまさに”鬱蒼とした”という枕詞が似合う見事な参道でした。

妙義神社への石段。静謐な雰囲気はとてもよいのだが、あまりに急で長いので登るのはとても大変。 この神社は何でも大河ドラマ”義経”のロケにも使われたとか…。
大黒の滝。今回唯一の水場であった。

 いいかげん汗をかいたところでようやくトレッキング・コースの始まりです。ここは標高が低く気軽に歩けるのですが、しばらく歩くと実は標高が低いことによる弊害があることに気づきました。”暑い”のです。今は夏とはいえ、普通は山の中なら爽やかな風のひとつも吹いているものですが、ここは平地と同じ風しか吹いていません。休憩してもちっとも汗が引きません。どうにもいけません、どうやらここは夏に来る場所ではないようです。
 更にもうひとつ標高が低いことによる弊害があります。ここら辺は人気マンガ”頭文字D”のバトルの舞台にもなった妙義だからなのでしょうか、真昼間にもかかわらず走り屋達の車やバイクがひっきりなしに走っていてその爆音が聞こえてきます。私は車もバイクも大好きなのですが、今の私はいちハイカーの身、俗世間から離れて自然を満喫したかったのに、これでは興がそがれてしまいます。
 更に追い討ちをかけるように麓で行われている工事の音まで聞こえてきてがっかりです。今まで山に登って車の音や工事の音が聞こえるなどということは無かったのですが…。

 このコースはトレッキング・コースと言ってはいますが、中々タフなコースでゴール地点の石門群に向かってジリジリと高度を上げていくので結構疲れます。途中で会ったハイカーたちも「トレッキング・コースのつもりで来たのにこれは大変だ。」と口々に言っていました。
 中間地点を過ぎてしばらく行くと登り、平ら、登り、登り、平ら、登り、登り、登りと登りの連続になり、体力があっという間に削られていきます。最後のとどめに岩稜に置かれた鉄階段を登らされます。空気の澄んでいる時期ならばここからの眺めは素晴らしいであろうと思いますが、あいにく今の時期は湿度が高く空気が霞んでいて眺めは今ひとつです。

山体を間近で見ると荒々しさが一段と伝わってくる。
妙義山の隣にある金鶏山。現在は登山禁止となっている。
コースの途中には岩をくりぬいたこんな場所もある。
展望台から下界を眺めるが、空気中の湿気が多く眺めはいまひとつ。

 コースも終盤に差し掛かり瀬谷さん待望の鎖場にやってきました。瀬谷さんはおニューのビデオカメラを回しながら、嬉々として鎖場を登り降りしています。何でもアウトドア情報誌にこの鎖場の写真が掲載されていて「ぜひこの鎖場を登り降りしたかったんだ。」そうな…。(^^ゞ
 鎖場を過ぎると、このトレッキング・コースのハイライトというべき石門群です。私はここに来るまでこの石門群の存在を知りませんでした。ですが、予備知識のない私が見ても、その造形は奇怪で異様で不可思議です。それは、自然に出来上がったものとは俄かには信じられないほど見事な石の門でした。
 このあたりまで来ると今までほとんどいなかった他のハイカーと頻繁にすれ違うようになってきました。子供会の遠足なのでしょう小学生と思しき子供の集団もいます。
 第四石門を過ぎ、第二石門に来ました。第二石門をくぐるルートを下から見るとかなりな傾斜で、そこに鎖が下がっています。高さは30mもありますでしょうか、結構危険な香りがします。(あとで聞いた話ですが、ここでは実際に事故が起こっているそうです。)第二石門を迂回するルートもあるのですが「せっかくだから…。」ということでアタックすることにしました。
 2人のハイカーが先にアタックしていますが、かなり苦労している模様です。私たちも続いてアタックしますが、岩から染み出した水で滑りやすくなっており、鎖を握る手に思わず力が入ります。
 ようやくてっぺんに登って石門の反対側を見て愕然としました。なんと反対側も同じような高さの急傾斜の鎖場になっているのです。第二石門を登ったことを後悔したことは言うまでもありません。てっぺんに到着していた先行のハイカーと力の無い笑顔を交換して下り始めます。

嬉々として鎖場を上り下りする瀬谷さん 微妙な安定を保つ「ゆるぎ岩」。
いったいどれほどの間ここに鎮座しているのか…。
第四石門、なんとも見事な石のアーチだ。 第二石門を登る瀬谷さん

 苦労しながらも鎖にすがって第二石門を下り、続くデンジャラスな”かにの横ばい”を過ぎてしまえばあとは何ということもありません。巨大な第一石門を通過すれば、ゴールはもう目の前です。約6時間あまりの意外に苦しかったトレッキングもようやく終わりになるのでした。

はるか上方にそびえる第二石門
「かにの横ばい」を慎重に通過する
帰り道の妙義道路から今通った第1石門を眺める。(画面左側の三角形)
登山道の出口から1時間半ほどかけて車に歩いて戻る途中、激しい雷雨に襲われた。
これはその直前の写真。上空が雷雲に覆われつつある。

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