【 末沢川へ 】
今日は9月2日の木曜日。会長と末沢川へ行く日だ。会社から帰り、そそくさと準備して『かじか』へ会長を拾いに行く。
かじかには既に見附川へ行く予定の山田、田辺両氏がもう一人のメンバー瀬谷氏を待って待機していた。車に大量の荷物を積み込み、皆に見送られていざ出発。
途中の那須高原SAで夜食を食おうと車を停めると、「岩田さん、岩田さん。」と呼ぶ声が聞こえる。声の方を見ると、根がかりクラブ里川部会の大矢さん達が休憩している。「川上さんは?一緒じゃないの?」と大矢さん。「いいえ。今日は私ら2人だけ。」と言うと、何故か安堵の表情を見せる根がかりの面々であった。
それにしても平日木曜の夜だというのに、我々といい根がかりの面々といい、ホント好きですね〜。
根がかりクラブの三人と別れた後は順調に道のりをこなし、車を越後荒川沿いの道から蕨峠への荒れた林道へと乗り入れる。荒れた路面に閉口しながら何とか麓まで来たが、どーも辺りの雰囲気が重々しい。林道脇には砂利や土砂が山積みになっており、あちらこちらに重機が点々と駐めてある。「橋の付け替え工事をやっているとは聞いていたけど、こんなところから工事しているんですかね?」「う〜ん。取りあえずもう少し行ってみよう。」だが、末沢川沿いの林道の入り口の所でバリケードと大岩で道を塞がれていていきなり進めなくなってしまった。今回は車止めでテン張る積もりだったのでデイバックしか持ってきておらず、食料等を背負って歩く事も不可能な為、泣く泣く末沢川を諦め他の渓へ行く事にした。
【薦川 】
しばし地図とにらめっこをして検討した結果、会長が昔雑誌で見たことがあると言う薦川(こもかわ)に行ってみる事にした。
三面川を下流に向け下って行くと、飯場等が立ち並びいかにも『工事してます。』と言う雰囲気を醸し出している。やがて行く手に建設中の巨大ダムが見えてきた。薄暗がりの中で見たのでハッキリとは分からないが、堰堤の高さ数十m〜百m程もあるのだろうか、ともかく三面川には不釣り合いな事だけは確かである。
移動する事1時間あまり、すっかり夜は明けている。時々道を間違えながらも何とか目的地に無事到着。しかしここは車止め付近に水場は無くテン張るのは無理なようだ。だがテン場の事は後で考える事にして、取りあえず釣りをする事にした。
装備を整えいざ渓へ。と言ったはいいのだが、ここは林道から水面まで20mぐらい高さがあるので、入渓するのに一苦労である。潅木に掴まりながら、へっぴり腰で降りて行く。
下に着いて渓相を見ると中々見事な表情を見せている。早速仕掛けをセットして釣り始める。が、それなりに釣れてくるのだがチビ岩魚ばかりでちょっとがっかりである。
【山蛭 】
その後パッとした釣果が得られないまま、当たりが遠くなり納竿と相成った。再びへっぴり腰で崖を登り返し、車止めで着替えをしていると、足から血がタラタラ流れている事に気がついた。と同時に会長が「うわ!ヒルだぁ!」と叫びだした。慌てて会長の所に行くと、指にヒルが吸い付いて血を吸っているではないか!無理矢理ヒルを引っぺがすと患部から血がダラダラ流れ出した。「かいちょ〜、俺も足から血が出ているんですけど、これももしかして?」「あぁこれもヒルにやられたな。」何とここはヒルの生息地帯だったのである。
ヒルに血を吸われたのはショックだが、今夜のねぐらを探さねばならない。逃げ出すように薦川を後にすると、会長推薦の勝木川に向かう。(会長は数年前にこの辺り一帯を釣って回ったそうだ。)
以前会長は勝木川の車止めでテン張った事があるとかで、その言葉を信じて車を進めるが、道の両側から草や潅木の枝が伸びていてやけに狭い。その内道の真ん中まで枝が伸びていて、どうにも車を進める事が出来なくなってしまった。
【日本海 】
林道の先を偵察して来た会長によると、この先もずっと木が茂っていて車は通れそうに無い、との事。さ〜てどうするか?と再び地図とにらめっこをする。
「時間も時間だし、他の川へ行っても良い場所があるかどうか分からないから、海でキャンプするのはどうでしょう?」と提案すると「おぉ、それはグッドアイデアだ。」となって、当初の予定とはまったく違う海辺でキャンプと言う事になった。
山北町(さんぽくちょう)の海岸にキャンプするのに好都合な場所を見つけた我々は、ようやく腰を落ち着ける事が出来た。 時刻は今まさに日が沈もうとする所、粟島をバックに日本海に沈んで行く夕日を眺めながら飲むビールは格別の味であった。(会長談、私は下戸なもので…。)
一息付いた私は、濡れた服を乾かそうと渓流シューズを入れてある袋に手をかけた。と何やらヒタッと手に張り付いた。「んっ?」と手を見ると「ぎょぇ〜!ヒルだぁ。」そ〜なんです。私は薦川から日本海までヒルを連れてきてしまったのでした。
【向川 】
今日は会長が前に来た時、そこそこ釣れたと言う向川(むこうかわ)に入渓してみる。『日本国』と言う意表を突くネーミング(私は素直に『にほんこく』と読んだのですが、本当はどう読むのでしょうか?)の山を左に見ながら向川に向かう。
入渓点が見つからず暫くうろうろしていたが、ようやく発見して釣り始める。私が準備に手間取っている内に、会長は素早く二尾釣り上げ御満悦の様子。遅れてなるものかと私も釣り始める。しかし、そこそこ釣れるのだが、ここも型が悪くせいぜい6寸といった所、一度1寸(!)の岩魚を釣ってしまった。
少し上流に移動すると淵や落ち込みが現れ大物が居そうな雰囲気になって来た。会長が大淵で粘る様子なので、その間を利用してキープした岩魚を捌く。腹を割ると何やら浮き袋に唐草模様のような白い物が見えた。「こ、こりゃ〜もしかして寄生虫か?」どうやらここの渓魚は可哀相な事に寄生虫に侵されているようだ。
通らずに行き当たったついでに、更に上流へ移動して二手に分かれて再入渓する。でも、やはり型は良くならず平均6寸程。まれに7、8寸の岩魚、山女魚も釣れるが滅多に出ない。期待の堰堤も7寸強の山女魚が出たきりで後は5〜6寸程度。
そうこうしている内に約束の時間が来て納竿となった。会長に釣果を尋ねると同じような結果だったらしい。どうやらこの川は大物を全て釣られてしまった後だったようだ。二人とも納得の行かない結果に終わった訳だが、そこそこ楽しんだ訳で何故か満ち足りた表情で向川を後にしたのであった。
今回の釣行は当初予定していた末沢川に入れなかったので、3個所も渓を渡り歩く羽目になってしまいました。おまけに山蛭に寄生虫と言った気色の悪い蟲達に出会うハメにもなってしまいました。でも、私は新潟県北部の辺りは今まで全く訪れた事が無かったので、かなり新鮮に感じました。いずれ機会があったらヒルと寄生虫がいない渓流を探して再び訪れてみたいと思います。 |