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 福島県伊南川 尺岩魚編


  1997年 7月12日(土)

  田辺、高野


   天候 :晴れ
   水況 :減水



Text  :高野 智
Photo :高野 智 

 午前1時に出発。岩槻ICより東北道に乗って西那須野・塩原まで順調に走る。塩原の辺りは鮎の解禁日らしく、懐中電灯を持った釣り人が川原で場所取りをしている。鮎の解禁の様子は初めて見るが凄い人数である。中には背中に鮎竿を背負い自転車で夜中の国道を走っている猛者までいた。釣り人の魚に対する執念たるや凄まじいものがある。もっとも数百kmの道のりを徹夜で運転して釣りに行く私達も同類なのだが。
 私達の目的地はさらに北なのでそのまま走り続ける。夜はまだ明けそうもない。この分なら夜明け前に伊南川に到着できるだろう。

 うっすらと明るくなってきたころに伊南川に着いた。準備を整え渓に下りてみると、最近雨が降っていないのでかなり減水して、水は澄みきっている。これはかなり厳しい状況である。目の前の淵でポツポツとライズがあり、竿を出すが反応はない。へつりをして上流に向かう。田辺氏が18cm程のヤマメを上げたが、私にはアタリも無い。減水で膝辺りまでになった流れを渡り、前年に実績のあるポイントに向かう。ここというポイントには2人で竿を出していくが全然アタリが無い。前年に28cmのイワナが出た対岸のポイントに竿を出すが反応無し。いったい何処に隠れているのだろうか。仕掛けは0.2号通しでやっているというのに・・・。1段上の落ち込みをやる前に根ががりしたので仕掛けを0.4号にアップしてオモリも4Bに替えた。これでガンガンの瀬の底に沈むだろう。

 こんなときは自分がイワナだったらどこに隠れるだろう。複雑な流れを読みながらポイントを探していくと、絶好の場所を見つけた。
 そこは大岩により流れが二分された、いかにも大物が潜んでいそうな場所だった。私は向う側の流れに餌を投入し、流れに乗って移動していく目印に全神経を集中する。二つの流れが合わさるところですっと目印が止まった。すかさず合わせをくれて、太い流れから魚を寄せようとした。しかし、全然寄ってこない。これはかなりの大物のようだ。釣りを始めて数年、まだまだ初心者の域を抜けきれない私には、それがどのくらいの魚なのか見当も付かない。
 奴は慌てる様子もなくユラユラと流れの中に居すわっている。竿に伝わる重さはかなりのものでとても抜き上げることは出来ない感じがする。ここでも経験不足からくる不安が竿さばきを躊躇させる。そうしているうちにだんだんと下流に下り始めた。幸いなことに猛然と突っ走るのではなく、ユックリとした泳ぎである。なんだかハリにかかっていることなどまるで気にしていないようである。私は竿のテンションを保ったままゆっくりと奴について下流に下った。下流は若干流れがゆるくなっていて足場も良い。こっちには好都合だ。ただ流れは太く簡単には寄せることは出来ない。20m程下がった所でようやく流心の外に出すことが出来た。私はタモアミを取り出し、頭上の枝に掛からないのを確認したあと、竿を立てた。もう少しでタモアミに入るという所で空振り。また悠々と流れに戻って行く。今度は頭を水から出して空気を 吸わせてもう一度タモアミに誘導する。今度はきっちりと納まった。かなりの大きさだ。ここで暴れられて川に落としたりしたら大変だ。私は急いで岸から離れた。

尺岩魚 早速メジャーを当てると32cm!。尺上の立派なイワナだ。初めての大物を釣上げ緊張して手が震える。こいつは活かし魚眥に入れて持っていくことにした。

 その後はまたアタリは無く、しばらく上流に向かったが無駄骨に終わった。一足先に下流に戻った田辺氏は七寸のイワナを上げていた。あまりにアタリが無いので車で上流に移動することにした。

 上流に向かうと落ち込みが増えてきて、渓相は非常に良い。しかし、やはりアタリは無し。今日はこれ以上やっても無駄だろうと言うことになり、いつものソバ屋へ寄った。下流部は水も少なく一応竿を出すが、3cmのハヤが釣れただけで早々に引き上げた。今度は秋がチャンスだろう。


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