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 新潟県 信濃川水系


  1998.05.16(土)

  中村、田辺、高野

   
天候:晴れ
   水量:平水
   気温:高



Text&Photo  :高野 智 

 私が渓流釣りを始めて5年程になる。その間いろいろな渓に行ったが、一緒に行った全員が「もうこれだけ釣れば十分だ」と思った渓は殆どなかったといってもいいだろう。しかし、今回はついに岩魚の世界と呼べる渓に入ることが出来た。
 
 この渓は私の所属する会の会長が見つけてきた渓で、素晴らしい所だということを聞かされた。残念ながら今回会長は同行できないが(会の顧問になっていただいた、根がかりクラブの川上氏の誘いで、瀬畑氏らと山菜取りにいくそうだ)、快く?私たちに渓を譲ってくれた。(会長、ありがとうございます)

 この渓は入渓点は一カ所しかないので、とにかく一番乗りしなければならない。私たちは午前1時に車止めに到着し仮眠を取ったのだが、興奮して良く眠れなかった。結局うとうとしただけで出発する。谷は深く、下降する地点までは30分程歩かなければならない。まだ薄暗い杣道をヘッドランプを頼りに歩いた。途中倒木の下をくぐったり、丸木橋を渡ったりして、目指す下降点の目印の所まで来たときは完全に夜が明けていた。そこから急斜面を木に掴まりながら下降すると、ついに岩魚の世界へ突入だ。

 同行の中村氏、田辺氏は4月末にも会長と入渓しているのだが、雨による増水で退却させられている。今回は会長を除いた2名のリターンマッチでもあった。

 渓に下り立ってみると思ったよりは開けている。早速竿を延ばし釣りはじめるが、アタリがない。さすがに入渓点は場荒れしているようだ。しかし、田辺氏が7寸の岩魚を抜き上げる。私もと思うのだが、なかなか釣れない。しばらく上がったところでようやく7寸強の岩魚が出てホッとする。渓は小さな落ち込みが続き、いたるところにポイントがある。両岸からは何本かの小さな沢が流れ込み森が豊かなことを物語っていた。

 田辺氏は快調なようで7、8寸の岩魚を釣っていたが、私と中村氏はあまり釣れない。2人が先行して姿が見えなくなった辺りで、なにげなく左岸を見ると小さな沢が合流していた。結構急な沢なので上流には魚がいそうにないが、滝のようになった1つ目の落ち込みには岩魚が入っているかもしれない。私はその落ち込みの小さな壺をそっと覗き込んだ。まあ、7寸位のは入っているかもなとダメモトでブドウ虫を振り込んだ。すると目印にアタリが出た。来たっ!と合わせると手応えが重い。底まで見える壺で針から逃れようと暴れているのは9寸近い良型だ。あわててタモを出し慎重に取り込んだ。手にとってみると確実に9寸はある。こんな小さな沢に大物が差しているなんて思いもしなかった。急いで仲間の所にすっ飛んで行き驚かせる。計ってみるとジャスト27cmだった。

 この辺り迄来ると人の痕跡がどんどん減ってくる。それにつれてアタリはどんどん増えてきた。私たちは交代で竿を出しながら進んでいく。木がかぶさった場所でアタリがあったがバラしてしまったのを田辺氏が代わりに釣り上げてしまい「俺の岩魚なのに〜」と二人で大笑い。あまりに釣れるので餌が足りなくなりそうだ。ただ中村氏は釣れてはいるのだがどうも良型が出ないようだ。

 やがて対岸の崖からシャワーのように清水が滴っている場所があった。私が「こういう所も外敵から見えないから岩魚がいるんだよ」と言って餌を振り込むと、とたんに目印が止まり8寸の岩魚が釣れてしまった。これには皆で大笑い。言ったとおりに釣れるなんて、嬉しいのなんの・・・。

 全然アタリが遠のかないので10時に上がる予定が昼になってしまった。そろそろ上がらないと帰りが辛くなる。私や田辺氏は餌が無くなってしまい、中村氏に本ブドウをもらって最後の一投をする。私は不発だったが田辺氏は崖際の本当に小さな落ち込みでなんと9寸岩魚を掛けてしまう。私の9寸岩魚を釣った場所もビックリだが、田辺氏のも、「え〜、こんなとこで〜」といったところで大物が出た。本当にこの沢は桃源郷と呼んでも良いほどの場所だった。


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