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 神奈川県 早戸川

  1998.10.11(日)
   中村、高野


Text :高野 智 

 丹沢山から流れだす早戸川には、途中に日本の滝100選にも選ばれている見事な早戸大滝がある。この滝は2段からなり落差は50mという大きなものである。今シーズンの最終釣行は、この滝を狙ってみようということになり早戸川に決定した。中村氏は早戸川の上流部に入渓したことがあり、水量、渓相とも申し分ないとのことだった。あとは魚がどのくらいいるかなのだが、以前入渓したときは短時間で数尾釣れたとのことだったので、いないことはないだろうと思い、行ってみることになった。

 10月も半ばとなると、さすがに深夜は肌寒いくらいである。荷物を積み込んだ私たちは中央高速を使い早戸川を目指した。車止めに着いたのは午前4時半、あたりはまだ暗く渓の音だけが聞こえる。しかし、すでに釣り人らしき車が数台止まっていた。ここまで来る間、物凄い台数の車が道路脇に駐車していたので、車止めに駐車スペースがあるか心配だったのだが、思った程ではなかった。しかし、こんなに人がいるのでは早いとこ行かないと先を越されると思い、素早く準備をして真っ暗な林道を歩きだした。

 早戸大滝までは林道が1km、そのあと登山道が1km程である。車止めのゲートを超えてしばらく行くと、道には大きな岩がごろごろと落ちていて乗り越えながら進む。やがて林道終点から登山道に入るのだが、暗くて道を間違えてしまった。少し戻ると登山道の入り口を発見。そこを登ろうとしたところ、後ろからアベック釣り人が登場。彼らも源流部に入るようだ。とりあえず後ろに付いていくことにした。

 登山道はどんどん高度を上げ、かなり山の上まで登っている。もっと川沿いに付けてくれれば楽なのに・・・。尾根を越えると道は渓のほうに下っていく。何度か木橋で早戸川を渡り、上流部の二股に着いた。早戸大滝は左の股である。先程の2人と沢割りをして先行してもらう。
雷平の出合いにて
雷平より下流を望む

 2時間も歩いたのだから少しは釣れるだろうと、私たちは竿を継いで釣りはじめた。水量は豊富だし、大岩がゴロゴロしていて落差もある渓で、たいへん素晴らしいところだ。神奈川にこんな綺麗な渓があることに驚いた。ちょっと人が多いのが難点だけど、あとは魚が釣れれば文句はない。ところがどこまで行ってもアタリが無い。そのうち、先行した2人に追いついてしまった。彼らは滝の上をやりますよと言っていたのだが、どうやら私たちの思っていた滝と彼らの思っていた滝が違っていたようだ。そこでもう一度話をして、私たちは早戸大滝まで竿を出さずに行くことにした。
早戸大滝

 渓沿いに付いた道しるべをたどりながら30分程歩くと、右岸から沢が出会ってくる。そこに早戸大滝はあった。もっと開けたところに掛かっている滝かと思っていたのだが、実際はゴルジュ状になった谷間にゴウゴウと音を立てて落ちている滝だった。出合いから滝までは、もっと距離があると思っていたのだが、実際は50m位しかない。ちょっとガッカリである。










オスの7寸山女魚

 まずは中村氏が1つ目の落ち込みに竿を出すがアタリは無い。次は私の番だ。ドバミミズをつけた仕掛けを、そうっと落ち込みの白泡に投入する。流れだした目印に変化が出た。ドバミミズはデカいので、直ぐにアワセるとばらしてしまう。たまに穂先を少し上げて聞いてみる。するとクンッ、クンッと穂先が引かれる。どうも小物のようだ。30秒も待っただろうか、もういいだろうとアワセをくれて抜き上げた。釣れたのは7寸のオスヤマメだった。こんな上流でヤマメが出るなんて驚いた。どう見てもイワナの渓相だからだ。次は中村氏が竿を出すがアタリ無し。1段目の滝壺にもいなかった。1段目の滝は垂直に近くて、さすがにイワナも登れないだろうと思いその上の40m滝の滝壺には竿を出さなかった。今思えばやるだけやってみればよかったと後悔している。

 出合いに戻った私たちは、今度は右の股を釣り上がった。こちらのほうが水量は多い。落差もかなりあり、1m程の落ち込みが続いている。一つ一つの落ち込みに竿を出していくが全然アタリがない。しばらくやっても駄目なので朝飯を食べてから、これ以上登っても釣れないだろうと下流に移動することにした。

 さっきの2人が登ってきたので聞いたところ、やはり全然アタリがないという。見るからにガッカリしている様子である。私のヤマメを見せると「魚はいるんだ。」と少し元気が出たようで、さらに上流に向かっていった。

 雷平の出合いのところで2人の釣り師にあった。「ここは先行者がいるから駄目ですよ」と教えてあげ、「右の支流に入ったほうがよいのでは」と言うと、「そっちにも人が入っている」という。いったい何人が入っているのだろうか。道路も無い源流部だというのに、とんでもない人数である。その後も次から次へと釣り人に出会った。しかし、話をした全員が釣れないと言っていたので、私のヤマメは非常に貴重な1尾なのだろう。ここは魚がいないのか食い気がないのか、どちらなのだろうか。

 さて、登山道を下り始めた私たちは、途中の踏み跡をたどって渓に下りた。そこは巨岩が転がり大きな落ち込みが連続する素晴らしい渓相の場所だった。しかし、そこにも今朝釣ったと思われる痕跡があり、やはりアタリはなかった。上流はだめだろうと釣り下ったのだが、しばらく行くとまた釣り人にあってしまい、今日の釣りは諦めざるをえなくなってしまった。その釣り人に話を聞くと、林道終点からここまで釣り上がってきたようだ。それでもアタリが一つもなかったという。「いつもは釣れるんですけどね〜」と力なく言っていた。

 時間も昼近くなってたし、これ以上釣る場所も無くなってしまった。私たちは竿を仕舞い帰路につくことにした。車止めまで戻ると10台以上の車が止めてある。そこから下って行くと釣り人の車がいたるところに止めてあった。おそらく数百人の釣り人が早戸川に入っているのだろう。ここは渓は綺麗なのだが、釣り場としては良いところではなかったようだ。

 さて来年は、どの渓から始めようか・・・。


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