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新潟県 信濃川水系

  1999.05.29(土)

  
田辺(ナベちゃん)、岩田(ママ)、高野
  天候:晴れ



Text&Photo :高野 智 

 これが4月の終わりに行った所と同じ渓だとはとても思えなかった。山の木々は緑に萌え、鳥はさえずり、岩魚も春を満喫している。夜が明けきらないうちに私たちは杣道を歩いていた。前日に降った雨は山を潤し、杣道を覆っている木々に雫となってまとわりついている。入渓点までは30分程の歩きである。

 渓に流れ込む小沢を降りると、そこはもう人工物のない自然のみの世界である。降りた所に絶好の落ち込みがあるのだが、さすがに入渓点付近は釣り荒れているので、暫く上がったところから竿を出す。今回は珍しく女性同伴、「酒処かじか」のママを連れてきた。つまり渓道楽会長岩田氏の奥さんである。だが、女性だからと侮ってはいけない、ママは今まで数多くの渓に入り、尺岩魚、尺山女魚を私などより沢山釣っている名人級の人。今回もその腕を見せてくれたのは言うまでもない。

 さて、はやる気持ちを押さえつつ仕掛けをつなぎ餌を付けていると、田辺氏が「おおっ〜!」といきなり唸る。「なんだ、なんだ、何事だよ」と振り向くとママが岩魚をぶら下げている。私がまだ一投もしていないうちに・・・。ママ、おそるべし!。

いきなり岩魚を上げるとは・・・ 男共の面目は丸潰れ

 ちょっとサイズが小振りだったのでリリースする。では、私もと張り切るが、虚しく餌は流れるのみ。するとまたもやママに岩魚が掛かった。今度は7寸程なのでキープ。あっと言う間に2尾も上げてしまうなんて・・・、唖然とする男たち。その後暫くはアタリも無かったので、餌をドバミミズにチェンジ。すると落ち込みからのカケアガリでコツコツというアタリが来た。「来た来た、来ましたよ〜ん」と餌を飲み込むのを待ってアワセると良型8寸が釣れた。「う〜ん、なかなかの型じゃない」とキープする。渓沿いには所々残雪があるが、この季節になると源流の岩魚達も回復している。

8寸岩魚 とても綺麗だ タニウツギだろうか 渓には美しい花が咲いていた

 私たちは早いペースで釣り上がって行った。ただ、最近人が入ったらしく、それほど釣れないのが残念である。途中でコゴミなどを仕入れながら、何尾かの岩魚に遊ばれて陽のあたる所で休憩。ここでナベちゃんが「昼飯にしません?」とのたまう。「だってまだ8時半だよ〜」と言ったのだが、どうしても「そうめん」が食べたいらしい。「判った、判った、頼むから暴れないで」とナベちゃんをなだめ(なにせ80んkgの巨体、暴れたら大変(^_^;)そうめんを茹でる。でもちょっと鍋が小さかったらしく、いっぺんに茹でたら下のほうが焦げてしまった。「だいじだ〜」と某翁の真似をしてタモ網にそうめんをぶっこみ、渓の水にさらす。それをウルイの葉に盛りつけて出来上がり。タレはゴマダレ! これが旨いんだ〜。3人であっと言う間にたいらげた。

ちょっと入れすぎじゃないの? ウルイの葉に盛りつけて、ゴマダレでいただきま〜す

 休憩した場所で私とママとで山菜を仕入れる。ナベちゃんはここまでキープゼロなので竿を出すも、またまたバラシてしまう。なんだか不調みたい。ここんところ岩魚に嫌われてるみたいね。でもその方がこっちにとっては好都合。その分がこっちに廻ってくるって寸法よ、ヘッ、ヘッ、ヘッ。

ナベちゃん、真剣です 岩壁の迫る中を釣り上がって行く

 さて、腹もいっぱいになった私たちは快調に釣り上がる。その後私とママとで7〜8寸を数尾上げたが、ナベちゃんは根がかりばかり。どうしちゃったのというくらい調子が悪い。まあ、ここんところ大場所ばかりだったので手元が狂っているんだろう。

 やがて狭い渓がいっそう狭くなったところで、雪渓が渓をふさいでいた。取り敢えず私が様子を見に行き、大丈夫そうなので乗り越えて先に進むことにした。それを乗り越えたところで竿を出すとまたしてもアタリが。しばらく待っていると餌を食い逃げされてしまった。貴重なドバをなんてことしやがると再度同じコースを流す。するとまたアタリが出たのでアワセると釣れたのは6寸位の岩魚。こりゃ小さいとリリースしたが、おかげでドバを2匹も使ってしまった。

雪渓を攀じ登り、先を目指すが・・・

 その後ナベちゃんに待望のキープサイズが2尾連続できて、ようやく塩焼きが食べられることになった。

 とここまでは順調、なんてことはないいつもの釣りだったのだが、帰り道で楽をしようと思ったのがいけなかった。情報によると上流に登山道があるらしい。ママも昔会長と入ったときに使ったことがあるという。だったら渓通しで帰るよりよっぽど楽じゃないってことになり、竿をたたんで上流をめざした。ところが行けども行けども登山道らしきものは見つからず、時間だけが過ぎていく。

 地図によると上流の二股に別れる手前にあるはずだ。だが現在位置が判らないので、あとどの位歩けばいいか検討がつかない。結局1時間以上歩いたところで諦めることにした。このまま行っても見つけられるか判らないし、すでに2時近いので下手をするとビバークにもなりかねない。

 休み休み山菜を採りながら帰ったのだが、結局車まで戻るのに3時間を要した。やはり、あそこで引き返して正解だったようだ。山菜はウルイ、ミズ、コゴミが沢山採れた。岩魚も釣れたし、今回の釣りはとても楽しいものだった。ナベちゃんはちょっと不満だったみたいだけど、また次回があるよ。


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