ようやく解禁です
今年も各地の渓流が解禁になって早一ヶ月が過ぎようとしている。いつもならとっくに出勤しているはずなのだが、今年はなかなかチャンスが無く、今になってしまった。そろそろ行きたいなと予定を立てたのだが、釣行先の新潟は雪代が入ってしまったようでダメだと言う。そこで急遽、群馬に行くという股ずれナベちゃんとナシを付けて一緒に行くことにした。今回はネット仲間のあきぼんさんもご一緒。さらにいつの間に嗅ぎつけたのか、会長も行くと言い出した。会長は先週群馬の渓に入り、結構いい思いをしてきたらしく、行くならそこにしようと言う。それも「僕は沢に入るから、君達は本流をやりたまえ。」と来たもんだ。過去の経験から、会長がそういうことを言い出すときは、決まって自分だけ良い思いをしようとしているときである。還暦をすぎたとはいえ、釣りに対する想いは衰えを見せない人だ。
ナベちゃんを拾って集合場所の「かじか」に着くと、会長が顔を出した。「連れて行ってあげるんだから、運転してよね。」と会長に車のキーを渡す。渓道楽では会長とはいえ、やることはやってもらうという厳しい掟がある。働かざる者、食うべからず!
ナベちゃんはつい先ほどまで呑んだくれていたようで、珍しくグロッキー状態。「もう酒止めた!」などと心にも無いことを言っている。今まで大酒飲みの人間から何度もその言葉を聞いているが、次の日にはまた飲んでいるので、今回も信じはしないぞ。
今回の目的地は群馬県吾妻川支流。あきぼんさんとの待ち合わせ場所の渋川ICに向けて出発だ。
途中、あきぼんさんより携帯に連絡が入り、渋川ICに着いたという。我々もほどなく関越道を降りた。ハザードを点けて止まっているテラノの後ろに付けると、あきぼんさんが降りて来た。ちょっと石黒賢の入ったとっても感じの良い方であった。
挨拶を済ませ深夜の国道を突っ走る。しかし、途中でヘッドライトにチラチラと舞う白い物が・・・。なんと雪である。天気予報でも言っていたので心配していたのだが、心配が現実になってしまった。魚券を持ってきてくれる所に着いた頃には、うっすらと雪が積もり、真冬並の状況になってきた。
この辺りではコンビニで魚券は売っていないようで、会長が前もって電話したら、なんと早朝にもかかわらず魚券をわざわざ届けてくれるという。熱心で親切な漁協の方に感謝である。おまけに前売りの値段でいいなんて。なんて素晴らしく親切な漁協の方なんだろう。
監禁事件発生!?
漁協のオジサンが来るまで、車で暖を取りながら釣りの話に花が咲く。真っ暗な中、ナベちゃんがトイレに行ったのも気にせず、3人は話込んでいた。するとピロピロと携帯が鳴り出した。「こんな時間に誰からだよ。まさか家で家族になんかあったんじゃあるまいなぁ。やっと釣りに来られたんだから、勘弁してよ。」とディスプレイを見ると、そこには田辺哲の文字が・・・。??? なんで、ナベちゃんなのと電話に出ると、「助けてください、便所のドアが開かなくなって、閉じ込められた〜。」はぁ? なんじゃ、そりゃ、と一同駆けつけると、真っ暗な便所の個室で中からガチャガチャやっている。みんな大爆笑! 「ノブが壊れていて出られないよぉ。」とまるで小さい子供のようなことを言う。外からやっても確かに空回りするだけで開かない。「そこで今日はじっとしてなさい」と言おうとも思ったが、それじゃあまりにかわいそう。いつも何かと世話になっているナベちゃんだもんね。ドアに2、3発ケリを入れるがビクともしない。どうするかと思案に暮れていると、突然ドアが開いた。レバー式のノブを上に上げたら外れたようだ。いや〜、良かった良かった。「スッキリして出ようと思ったら、開かないんだもん。焦っちゃってさぁ。でも、携帯持ってて良かったよぉ。」と体に似合わず半べそ状態のナベちゃんであった。
半年振りの再会
漁協のオジサンに「ホントに釣るの?」と呆れられつつ、夜が白み始めたのでちょっと上流から渓に降りる。会長は「じゃあ、頑張ってねぇ。」と言い残して沢に向かってしまった。
あきぼんさんは「もう少し下から入りますね。」というので、私とナベちゃんのいつものコンビで、雪が積もって滑りそうな斜面を降りて、竿を出す。まずは今年の第一投を流れの緩いところに投げ込んだ。目印はゆっくりと流れに乗り、駆け上がりでクンッとアタリが出た。かるく合わせるとピラピラ〜と小さいが綺麗なヤマメが宙を舞う。「お、いるいる。」とチビを流れに返し、釣り上がる。
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巨大な岩が累々と重なる渓
人の存在が小さくなるとき |
渓は雪が深深と降り続き、木や岩はすっかり雪化粧している。流れは清らかで透き通り、この時期にしては結構水量もある。道路沿いの渓にしては、珍しく荒れてなく、堰堤も無い。ウェーダーのフェルトの底が高下駄のようになるのを除けば快適な遡行である。ただ、残念なことに釣れるのは15cm止まり。とてもビクに入れるような型ではない。しかし、どれも魚体はとても美しく、まさに渓流の女王に相応しい姿。半年振りの美少女との再会にオジサン釣り師の心は弾んだ。
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美しいパーマークが並ぶ
渓に棲む宝石 |
それにしても大きいのはどこに隠れているのだろう。どんな筋を流そうと、まったく気配も無い。来るのは小さい子供ばかりである。「この冷え込みじゃ、口を使わないねぇ。」とナベちゃんが言う。まさにその通り、そんな状況では私達のような源流でしか魚が釣れない釣り師には、まったくお手上げである。我々は釣っては放しを繰り返していた。だんだんと集中力も途切れがちになり、またいつもの悪循環。ちょっと飯を食べて元気が出たのだが、釣れるのは相変わらずのチビヤマメばかりであった。途中一度だけごく僅かな小さなアタリがあった。しかし、アワセ損なう。二人で今のはきっと良型だよなぁ、とガッカリ。そういうチャンスを物にできないのが、ヘッタピーの証拠だろう。
ナベちゃんが先行し、私がちょっと遅れて行くと、なにかぶら下げてこちらを見ている。遠いので分らないが、どうやら良型を釣ったみたいだ。小走りで追いつくと、8寸はある良型、それも岩魚である。それは腹の黄色い、明らかに居付きと分るオスの岩魚だった。聞くと落ち込みの白泡の立つ岩のエグレで来たという。よく残っていたものだ。あとで知ったのだが、そこは先週会長が釣っていない区間だったらしい。会長が釣っていたら、間違いなく釣られていただろう。それほどセオリー通りの場所で来たのだから。ただ、流れの奥まで餌を送り込める釣り師はそれほど多くないのだろう。だからこそ残っていたのではないだろうか。ベテランの会長ならば、間違いなく・・・。
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深深と雪が降り積もる
真冬に逆戻りしてしまった渓
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美しい居付きの岩魚
まだ冬の名残のサビが残る
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ほとんどヤマメしか釣れないのを考えると
もしかしたら、この岩魚は天然物かもしれない |
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やっと良型が来て、色めきたった二人。また集中力を取り戻したかに見えのだが、そこから先はアタリも遠のきだして、弾む心は再び深い淵の底に沈んでいった。
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道を歩きながら見上げると岩山が目に入った
自然は想像を絶する威圧感を与える |
時計を見ると既に戻る時間となってしまった。あきぼんさんは遠慮しているのか未だ追いついてこないので、適当な所で道路に上がり、とぼとぼと車に向かって引き返した。
途中会長の車が来たので乗せてもらい、駐車場所に戻ると一足先に着いたナベちゃんとあきぼんさんが話していた。私とナベちゃんが歩いたあとでは、さすがのあきぼんさんも良型は出なかったようで、残念である。この後どうしましょうかとなり、あきぼんさんが「もうちょっと釣りたいです。」と言ってくれたので下流でやってみることになった。良かった、実は私ももう少し粘りたかったんですよ。
さて、温泉街の下流で車を降りた3人、いそいそと流れに竿を出す。会長は4尾キープしたのと、ご老体ゆえの疲れからか車でお休みらしい。上流に比べると人の手が入っている感じではあるが、成魚放流もしているようなので期待は持てそう。3人で交互に流れの緩い深場を狙って釣り上がる。しかし、やはり水温が低いのか、釣れるのはオチビばかり・・・。そんな中、またもやナベちゃんが8寸近いヤマメを釣り上げた。だが、明らかに成魚放流と分る魚体。先ほどまでの魚とはこうも違うものか。残念ながらそこでも良型は1尾だけだった。
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下流の流れに竿を出す、あきぼんさん
群馬の激戦区で鍛えられた竿さばき |
美人の湯
もうこうなったら温泉だ! 寒さで腰も痛いし、ゆっくり暖まってのんびりしようや、と温泉に向けて車を走らせる。村営の温泉施設は400円。かなりの賑わいであった。泉質はアルカリ性でヌルヌルとした感じが残る美人の湯。でも、そこには昔の美人が大勢いただけだったが・・・。 昼飯を食べて、日本酒にまで手を出すナベちゃん。確か夕べ、もう酒なんて止めたとか言ってなかったっけ?
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冷えた体には温泉が一番
美人の湯でポッカポカ |
今回は残念なことに雪となってしまった。だけど、あきぼんさんにお会いできたし、良型は出なかったけど綺麗な渓で釣りもできた。自主解禁としては満足な釣りであった。あきぼんさん、次回は新緑の渓にご一緒しましょう。
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