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福島県浜通り地方 沿岸渓流

2001年4月14〜15日
岩田会長、渡辺副会長、田辺事務局長、中村敏之、瀬谷進一、永田信明、高野光晴、田中康、伊藤智博、松井隆明、村川幸二、川久保秀幸、高野智


Text:高野智
Photo:高野智、中村敏之
 

 今年も渓道楽恒例の春の釣行会がやってきた。釣行先は福島県浜通り地方。この辺りは降雪量も少なく、解禁時からどの渓でも竿が振れる。また、河川は源となる山々がそれほど高くなく、穏やかな雰囲気の中で釣りが楽しめるはずだ。というわけで21世紀の活動はここからスタートとなった。

 4月13日午後11時、中村氏のインプレッサに同乗してナベちゃんを拾いに行く。いつものように駐車場にてピックアップして、かじかに到着。もうすでに皆集まっていた。ほとんどの会員が今季初の釣行とあって、素晴らしい笑顔で釣りの話に花が咲いている。中には、もうすでに尺物を釣り上げたような表情の人も・・・。

 4台の車に分乗した私達は東北自動車道岩槻インターを目指す。いつもならここから宇都宮方面へと進路を取るのだが、今回は常磐道経由なので逆方向。なんだか渓流釣りって感じじゃないなぁ。
 四街道に住む田中氏とは途中のP・Aで待ち合わせ。P・Aに到着したところ会長の乗ってる車が来ない。どうせ途中で小便でもしてるのだろう。だから出る前に生ビールなんて飲まなければいいのに、もう、会長ったら・・・。
 このP・Aには食事するところもないので、高速を降りたコンビニで後続を待つことにした。

 軽く夜食?を取りながら待つこと数十分。ようやく会長らの車がやってきた。買出しを済ませて各車目当ての川に向けてアクセルを踏み込んだ。

 さて、今回の私の同行者は、「釣りこそ人生」股ずれナベちゃん。今年すでに40cmという大岩魚を釣り上げている川久保氏。そして例によって20年来の付き合いの中村氏の総勢4名。1台きりになったインプレッサは深夜の道を飛ぶように駆け抜けた。

 やがて目指す渓沿いの道に乗り入れ、上流を目指す。辺りはうっすらと春の薄明につつまれ、川の様子がぼんやりと伺える。どんどん上流に向かって行った我々の目に渓の様子が浮かび上がってきた。「・・・、水が無い・・・!」希望に満ちた我々4人の釣り人を待っていたのは、取水によりほとんど水の流れていない川床。そこには白く埃を被った岩がゴロゴロと転がっている風景が映し出されていた。事前情報ではこの辺りは取水されている場所が多く、区間によっては水がほとんどないということであったが、どうやら我々のいる区間がそのものズバリのようである。情報を貰っているのはこれより上流なのだが、そこに行ってもあるかどうか分らないよというナベちゃんの意見に、しかたなく下流に戻ることにする。

 下流に下ると放水口から吐き出された水によって、流れは復活している。やるならこの区間しかないなぁと、仕度をした4人は渓へと降りた。渓は蛇行していくつかのぶっつけができており、渓相と水量からすれば有望である。ゆっくりと渓へと降り、そそくさと仕掛けを繋ぎ第一投。
「さあ、良い子の皆さん、ご飯の時間ですよぉ。プクプクして美味しいブドウ虫ちゃんですよぉ〜。」
 みんな無視・・・。アタリ無し・・・。
 ならばこの筋はどうだ。D社朝霧6.6mはしなやかに弧を描き、長いナイロンラインがポイント上流にハリを運ぶ。底波に乗った餌は一等のポイントである2つの流れがぶつかる場所に向かってゆっくりと流れていった。目印がその地点に差し掛かるやいなや、ゴンッ!というアタリが、アタリが・・・。出ない。流れに乗った仕掛けは何事も無く下流へと運ばれていく。おかしい、こんなはずじゃ。ハヤのアタリすらないなんて。何度振り込んでも仕掛けは空しく流れるのみ。目印には何の変化も出ない。30分もやって全くアタリも出ないので、早くも飽きてしまった私。渓沿いに咲く見事な桜の花を眺めながら、一服付ける。「春の里川はのどかでいいねぇ」東京では散ってしまったサクラが、ここではまさに満開。春の渓を彩る華やかなサクラ。周りの新緑とのコントラストがとても素晴らしい。ウグイスの声なんかも聞こえたりして、ほんとにのどかだなぁ。釣りに飽きた私はシャッターを押しまくる。

下流では満開を過ぎてしまっていた
本格的な春の訪れ
桜の大木に近寄ってみる
離れて見るのとはまた違った表情を見せてくれる


 そうこうしているうちに、下流へ釣り下った中村氏が戻ってきた。
「どうだった?」
「う〜ん、アタリは一回あったけど、あわせ損ねてそれっきりだよ。かなりスレてるねぇ。」
 やはり解禁時から雪の無いこの地方、そうとう釣り人も入っている様子である。しかたがないので、釣り上がったナベちゃんらの後を追う。たらたらと写真なぞ撮りながら行くと2人の姿が見えてきた。見るとその先にもう一人釣り人が。どうやら途中の入渓路から入ったらしい。
 結局ここでは全員ダメであった。

山の木々の目覚め
新緑を纏うものもあれば、まだ、まどろんでいるものも
咲き誇る桜
一年のうちで最も華やかな時

春の流れに竿を出す
スレたヤマメはなかなか微笑んでくれない

 ならば次はここしかないと目星を付けたのは、別の渓の上流部。とは言っても山奥でもないので、必ず渓に沿って道が走っている。それでも、先ほどよりは渓も深く渓相も良いので、4人で踏み後を下った。
 そこはそれほど落差もなく、小さな落ち込みが連続する渓。それでも大き目の落ち込み下はそこそこ抉れて深くなっている。そんな場所の一つでナベちゃんが7寸弱のヤマメを掛けた。よっしゃ! ここは居るでぇ〜! と色めきたつ4人。空気の抜けた風船のようだった4人の気持ちが一気に昂ぶった。が、あとが続かず・・・。ぽつぽつと5,6寸のヤマメが出るのだが、どうにも良型が来ない。普段は奥多摩、秩父といった激戦区を攻めている川久保氏はさすがに上手く、数尾のヤマメを釣り上げている。しかし、いかんせん大きくても6寸程度。これではとでもビクに入れられるサイズではないと、全てリリース。

 さ、こんなときは美味いものでも食って気分転換でもしましょうか。車に乗りこんだ4人は国道に戻り、食堂を探す。するとありました!米沢牛焼肉。これは美味いだろうと川虫に食らいつくヤマメのようヨダレをたらし(ヤマメってヨダレたらさないか)、4人は暖簾をくぐったのである。
 さて、空腹に耐え兼ねてパンをカジッってしまった川久保氏は軽くラーメン。私は牛タン(もちろん米沢牛ね)、あとの2人は焼肉定食と注文して料理を待つ。待つ、待つ、待つ。なんでじゃ〜、別に込んでる訳でもないのになんで来ないんじゃ〜!と飢えた4人は厨房にでも飛び込まないほどのイラダチ。ようやく運ばれてきた料理にがっつくも、これ、米沢牛なん? って感じの味。これなら昨日江戸川橋で食べたサーロインステーキランチ880円也のほうが美味しいじゃない。相当ガッカリきましたよ、私は。
 残念ながら昼飯を外してしまった我々は、このまま宿に向かうかどうか考えたのだが、ここで上がってしまうのはあまりにも寂しいじゃないかと、最後のチャンス発電所の放水口で大物を狙うべく車を走らせた。
 放水口周りは上から覗くとそれほど深くなく、残念ながらちょっとなぁという感じであった。一眠りするという中村氏を残して、踏み後を辿り渓に立つ。放水口直下は掘れていないが、その下は深みが続き有望そうである。しかし、ここにも最近付けられたらしい真新しい足跡が無数にある。ここも相当やられている様子だが、それでも全然居ないことはないだろう。
 重めのオモリを付けて仕掛けを流し込むと、ククッというアタリが出た。お、居るよ居るよと、第2投。しかし、やはり1発で決めないとダメらしい。川久保氏はちょっと下流で綺麗な居つき岩魚を釣った。だが、これも6寸程度。私はアタリは出るのだが、ハリに乗らない。こうなったら最後の手段と、0.2号通しの仕掛けにチェンジ。橋の上ではナベちゃんが「そろそろ時間だよ」と言っている。これが最後と仕掛けを流すと綺麗なヤマメちゃんが出た。「今日は大物賞があるんだよなぁ。この状況じゃみんなたいしたのを釣っていないだろうから、これでも3位くらいには引っかかるかもな。」と6寸のヤマメを前に悩む私。でも、こんなんで賞もらったら恥ずかしいよなと思い直し、流れに返してあげた。

 車に乗り揺られているといつの間にやら眠ってしまったようだ。気がつくと富岡駅の近くに差し掛かっていた。「宿はこの辺なんだけど・・・」としばらく探すと、ありました。駐車場には渓道楽の2台の車。フロントのおねぇさんは笑顔が良くっていい感じ。さっそく荷物を解いた我々は太平洋の見える温泉に入り、一日の疲れを癒した。

 一風呂浴びてさっぱりした我々は、直ぐに他の会員に探りを入れた。話を聞くとやはり皆さんシブかった様子である。そんななか、一人ニコニコしているのは車屋さんを営む永田氏。なんでも23cmのヤマメを釣ったらしい。ここにいる他のメンバーではキープサイズは出ていないので、今回の大物賞は永田氏か? まだ会長のグループが帰ってきていないのが気になるが、これだけ遅いということは、釣れていないからなのか。ニコニコ顔の永田氏であるが、内心はどうだったのだろうか?

 夕食までの時間をゴロゴロとしながら過していると、廊下のほうで何やら声がして、会長グループのご到着。直ぐに会長に探りを入れる。「う〜ん、あまり釣れなかったよ」
あまりということは釣れたってこと? でも、どうやら会長は大きいのは出なかった様子。じゃ、他の人はと聞くと、なんと高野光晴氏が尺1寸の岩魚を釣ったらしい。今回の大物賞は商品券1万5千円である。これで残念ながら永田氏の大物賞は無くなってしまった。まあ、33cmの岩魚じゃ相手が悪かったですよね。それでもしっかりと2位の商品券をゲットした永田氏であった。
 海の幸を豊富に使った料理に舌鼓を打ちながら表彰が行われ、めでたく大物賞と2位に賞品が手渡される。3位は該当無しということで、次回へと繰り越された。
「会長、今回は良型が出なかったですねぇ。」と会員の誰かが言うと、
「うん、高野氏にポイントを譲ってあげたんだよ。」と相変わらずの会長。
「どの辺で釣ったんですか?」との問いかけに、「うん、○×川の上流だよ、牧場があって、うんたらかんたら・・・」とニヤニヤしながら答えるも、「会長、そんなの誰も信じないよ。」と会員にやり返される。
 夕食後も各部屋では遅くまで話しに花が咲いていたようである。

 明けて翌日。十分に睡眠を取った私達は、速攻で朝飯を済ませ出発の準備に余念が無い。フロントで会計を済ませるべくガヤガヤやっているところに、宿の妙齢の女性が・・・。目ざとくそれを見つけた会長、フロントの女の子に「彼女は、宿の人? 独身・・・じゃないよねぇ」「ええ、宿の女将さんです」のやりとりに会員一同大爆笑。会長ちょっとがっかり。まったくもう、でも、また一つ美人女将のいる宿見つけたじゃない。

 さて、今日はダム湖の上でやってみようと皆と別れ山道を登っていくインプレッサ。しかし、自然林に囲まれた静かな渓ではあったが、いかんせん水量が少ない。このところ雨も無く、渓はどこも渇水のようである。ここに4人は厳しいだろうと、昨日の渓で竿を仕舞った所から上をやってみようと、早速場所替えとする4人であった。

 昨日の渓に着き川虫を餌に釣りあがるも、やはりというか1尾も釣れない。最後の大場所堰堤でナベちゃんに期待がかかるもダメであった。アタリはあるんだけどねぇ。

 こうなると帰り道で適当な所でと諦め気分の4人。国道沿いの田圃の中を流れる川で中村氏が竿を出した。流れの淀みを見るとヤマメの稚魚が泳いでいると川久保氏が言う。こんな里川にもヤマメはしっかりと生きていることになんだか安心した。他の3人が車で休んでいる中、しばらく粘っている中村氏。やがて諦めたのか戻ってきた。
「随分粘ってたじゃん。」
「いやぁ、デカイのに切られちゃってさぁ。ありゃ38cmはあったな。」
と冗談混じりで話す中村氏。でも、切られたのはホントのようだ。ただ、顔は見てないらしいので、ハヤかニジか、もしかしたらナマズか。某地方では最近渓流釣りに行ってナマズを釣るのが流行っているらしい。
 それでも、今までの渓に比べると魚影は濃いらしい。もっとも用水路のような川に竿を出す渓流釣り師もいなかんべぇと、昼飯後にでもこの近辺をやってみることにした。

 さて、昼飯を食ってからポイントを探す。車は徐々に上流に・・・。これはやはり渓流釣り師の性であろうか。上流に行ったらまた釣れないかもしれないのに、どうしても上に行きたがる懲りない面々。案の定、そこには小川のような流れがあった。それでも、魚が隠れるのを見てしまった我々は、二手に分かれて入渓することにした。

 私は川久保氏と1kmほど上流から入渓。川久保氏は釣り下がり、私は上に。だが、上に行ったのは失敗だった。ちょろちょろの流れにはポイントが無い。それでも入渓点で1尾バラシたので、居ないことはないらしい。でも、そこで止めればいいものを、しつこく釣りあがる。流れは次第に細くなり、とても釣りになる感じではなくなってしまう。ここなら間違いなくというちょっとした落ち込みに竿を出し、居ないことを確認したところで今回の福島釣行は終わりを告げた。

 川久保氏は20cmほどの岩魚を1尾キープし、下流の2人をピックアップ。誰一人怪我もなく無事「会の初釣行」を終えた我々はハイウェイへと走り始めた。


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