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新潟県仙見川
2005/05/27〜28


堀江(筑波渓流会)
L紺野.横倉.伊藤(渓道楽)







Text : 伊藤
Photo : 伊藤&紺野

 擬餌鉤隊の旗上げは昨年の大石川大熊小屋に始まる。堀江さん紺野君はテンカラ、横倉さんと私はルアーで大石川上流部を軽快に岩魚を釣上げての楽しい2泊3日であった。その後の釣行では、ガンガラシバナを目標に早出川を目指すものの、ルートミスに気づくのが遅く手前の枝沢で10時間以上さまよい、撃沈されてしまったりする渓青春時代真っ盛りの4人組である。

 5月上旬、岩田会長の経営する「かじか」にて今シーズンの『擬餌鉤隊釣行計画打合せ飲み会』が行われた。茨城そして栃木県に住む私以外の3人が、東大宮まで来てくれる事をありがたく思う。会長やママさんも話に加わりにぎやかな打合せの結果、足慣らしの渓として早出川水系の仙見川へ1泊2日での釣行に決まった。堀江さんと紺野君の休日にあわせ、金曜〜土曜の日程である為、横倉さんと私は職場に休暇申請をする事となる。第一の関所であるが、日頃の職に対する姿勢が功をそうしたか?なんとかクリアー。

 木曜の晩にJR宇都宮線を利用し蓮田駅より待ち合わせの小山駅へ向かう。帰宅ラッシュ時間という事もあり、デカザックを持っている私は車中でかなり浮いていた。何人かがチラチラ見ている。私も数時間前まで働いていたんだ(実際は出勤したものの仕事が手につかず、パソコンに向かいながら手足のストレッチをしていた)、酒も仕事も八分目、余暇活動に取り組む心のゆとりを持とう!などというヤング窓際族の心の叫びが届いていただろうか。
 しばらくし小山駅に到着。待ち合わせ時間より早く着いてしまったので駅の待ち合わせ所で時間の調整をする。小山駅ではJR線一般者フォトコーナーが開設されていた。昨年末より渓道楽写真部に入部し、日々写真道に励んでいる私には人気グラビア写真より魅力である。師匠の中村さんに後日メールで知らせる(キャノン派、20Dを使用)。しばらくし、堀江さん、紺野君が迎えに来てくれた。人相は悪いが、笑顔の似合う2人である。小山駅より栃木市の横倉さん宅に向かう。「道順は覚えています」という紺野君であったが、横倉さんが立つ家の前を通過してしまい、携帯に「今、目の前を通り過ぎましたよ」との連絡がある。ちなみに帰りも通過し、苦笑いをしていた。運転は平等に交代というのが4人の決まりである為、1時間ほど楽しく会話をすると後部座席の堀江さん紺野ペアーは仮眠をする。おかげで私も数ヶ月ぶりの禁酒ができた。

 車止めの車中で目を覚ます。時間は午前4時。横倉さんが天下のイビキをかいていない事に気づき、体をつついてみると動いたので2度寝する。
 再び目を覚ましたのは5時前となる、1台の車が到着した。「マズイ、先を越される!」ハッと飛び起き他の3人を見てみれば爆睡中、油でテカッた顔はオヤジ予備軍優等生。ごそごそ動いていると目を覚ましてきた。横倉さんが話しをしに行くと山菜取りだとの事。さぞかし自分達の車を見た時には先行者の存在に落胆したであろう。バカ長を履くと足早に渓に消えていく。地元ナンバーの車であった。
 4人が清々しく体を伸ばすが雲行きが怪しい。着替えを始めた頃には雨が降り始めてしまった。仙見川は「山ヒル」の代表的な生殖地と聞く。数年前、何も知らずにお盆時期に足を踏み入れた堀江、紺野ペアーの貴重な体験談を聞いていた私は川上顧問からのアドバイスどおりパンスト2枚重ねで備えをする。私以外は備え無し。リーダーの紺野君を先頭に堀江、伊藤、横倉と進む。

今回のメンバー 左から紺野、横倉、伊藤、堀江


 事前の話どおりルートには登りもなければ下りもない。こんな事ならビールをあと2本追加でかついでくれば‥・、などと酒飲みならではの後悔をする。リーダー兼食担の紺野君の計画で晩飯の山菜てんぷら用の食材を収穫しながらのんびり進む。結構な種類の山菜があり、「これは○○草だ!」と楽しく行けるかと思いきや、メンバー全員が「これは○○草だ!たぶん‥」というオチがつきメジャーな数種類を収穫する事となる。
 しばらくすると、3番目にすすむ私が足もとにウニョウニョ動く1匹のヒルを発見した。雨が小降りとなり少し蒸している状況の為かこの時期いる予定ではないはずのヒルである。がっ、いるいる、大小さまざまのヒルがダンスをしている。私と横倉さんが「きもい〜、きもい〜」と女子高生用語を連発していると、堀江さんが「お盆時期はこんなもんじゃねーぞー、ヒルを踏まなきゃ歩けないほどいるんだ」と強気な発言であったが、歩く速度は一気に加速し、人工の石橋に到着する。足元を互いに確認すると紺野君が一匹に吸血されていた。他の3人はスパッツに数匹ついておりウニョウニョ動いている。指先で取り外そうと引っ張るが思いのほか吸引力が強く、こんどは爪に吸い付いた。不思議な事だが石橋の上には1匹もいない。体力の消耗がほとんどない為、数分の休憩をし再出発となる。しばらく進むと見晴らしの良い開けた場所に出た。心地よい風を受けながら見る山藤の花に、ヒルの存在を忘れた。
 2時間も歩かずに予定していた仙見川下降点のテン場に到着した。堀江さんと横倉さんもしっかりと吸血されており、タバコで落とす。私は無傷。この場所にはヒルがいないとの事だが、数メートルも歩けばウニョヒルの山道だ。相談した後、川原にテン場を決める。再び雨が降る前にとタープを張り終え、釣りへ出発。

眼下には清らかな流れが見え隠れする 天ぷらの食材の収穫に余念が無いメンバーたち
ヒルの蠢く山道を足早に進んだ


 テン場の前で堀江さんの振るテンカラに反応、岩魚の活性はよさそうである。赤倉川との合流ではルアーに2〜3匹でアタックしてくるが、久しぶりの為か、なかなかフッキングできない。くやしいが、釣り人なら一番興奮する瞬間であろう。数回キャストすると見抜かれたのかルアーを追わなくなってしまう。ねばる必要もないので先を進む。堀江さんと横倉さん、そして私で交互にポイントを攻め釣りあがる。水温が極端に冷たくなり、上流から冷気が流れてきている。雪渓が現れるのに時間はかからなかった。山菜取りをしていた紺野君がよじ登り、それに続く。最後の横倉さんは2本のお助けひもに引っ張り上げられ皆のところへ。横倉さんは長丁場の登山道には誰よりも強いが、「へつり」に若干弱い。腹が出ておりバランスがとりづらそうだ。甘い物が好きな横倉さんである、おそらくあの腹をさばけば「あんこ」が出てくるのであろう。数箇所のスノーブッリジを高巻き上流部を目指す。やらしい巻き道もあるが距離をかせぐ。時間は午後3時近くになっていた。テン場に引き返す事となったが、紺野君だけはもう少し偵察に行く事となり、無理はしないと約束し二手に分かれた。

 テン場に戻り辺りを見わたせば、流木が多く有り薪には不自由はなさそうだ、しばらく休憩と川原で寝転び空を見ると、青一色の快晴であった。


 紺野君が戻り状況を聞くと、やはりスノーブリッジが続くとの事。良いサイズの岩魚を腰に1匹ぶら下げている。メンバー全員が釣りには満足、いよいよの宴会準備を始めようという雰囲気になる。ザックを開き荷物を並べビールを冷やし、焚き火の準備。「飲んじゃおうか?」の合図に1本目のビールが空になった。料理は山菜てんぷら・岩魚の唐揚げ・マーボーナス・キムチ鍋等、数多くあり楽しい会話で宴会が始まる。焚き火を囲みメンバーがほろ酔い状態になると、西の空が真っ黒になり雷雨が来るのが予測できた。2次会はタープの下でとの事になり移動をする。直後、強雨にド迫力の雷が鳴る。タープの設置が上手く出来、雨も入らず快適である。落ちるはずはないと思いつつも、外に出ていた金属製のフライパンを、そーっと中に入れた。タープにあたる雨の音も久しぶりに思えた。酒もビールから日本酒やウイスキーへとペースが上がる。話もさらに盛り上がり、「お盆ヒル話し」に紺野君が一人思い出し笑い。聞くと、堀江さんが川原でシューズを脱げば50匹以上のヒルが中にいて、大量の血が流れ出てきたとの事。そして女のような声で「きゃー」と驚く、その「声」を思い出し笑ってしまったらしい。「あの時、女のような声でしたよねえ」との紺野君に対し堀江さんは「‥‥。」であった。あれだけ激しい雷雨もおさまり、静かな川原に戻ると3次会は再び川原でとの事になり、千鳥足で元の位置へ。焚き火の煙が空高く上がる。明日の天気は晴れると予測できた。最近発売された「渓流コッフェル」の耐久実験をしていると、すっかり渓は闇に包まれた。会話も少なく焚き火を見つめる。砂地で眠ってしまった堀江さんを起こしシュラフの中へ。飲みすぎで目が回っていた。


 翌朝、天気は快晴。横倉さんは飯が出来るまでの時間、釣りに出かける。っが、1時間もしないうちに戻ってきた。聞けば、釣りをしている背後から獣のいかくする鳴き声が聞こえ、怖くなり戻ってきたという。「クオー」「クオー」とか真似をしている。とにかく暖かいものをと食事をすすめ、落ち着きを取り戻させた。帰り支度をする為パンストを履いていると紺野君がカメラを構え近づき、「パンストってどんな感じですか?」とか「癖になっちゃいません?」などと聞いてくる。うっかり答えようなものなら、間違えなく釣行記の「ネタ」にされる。なにげに危険な存在である。
 帰り道、相変わらずのヒルのダンスに川上顧問の「仙見はヒルとマムシで守られている」という言葉を思い出す。途中、山菜取りの男性2人女性1名とすれ違う。全員が地下足袋を履いている。私も仕事で履く事があるからわかるが、足袋には隙間が多いはずだ。問いてみなかった事を後悔する。車止めに無事着き足元を確認すると横倉さんは2匹に吸血されていた。

 今シーズン初めての釣行で数々の楽しい思い出ができた。ナイスなメンバーにはいつもながら感謝したい。小山駅で「また行きましょう!」と挨拶を交わし、あっというまの2日間が終わった。


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