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思い出の楽園 佐渡釣行
新潟県 佐渡島
2006/03/31〜04/02


深町隆行(カヌ沈隊)
松井伸介(渓道楽)


Text 松井 伸介

 仕事では必ず年に2回は訪れていたこの佐渡だが、プライベートで訪れるのは今回が3回目。
 1度目は2002年に荻野さんをはじめとする渓声会の源流部会のメンバーで訪れた時。川上さんとの初めての出会いがこの佐渡だった。
 川上さんは瀬畑翁や根がかりの方々と沢横に渓泊まりしていた。源流ビギナーの自分からすればオールスター軍団を憧れの眼差しで見ていた。
 2度目は2004年。川上さん、我妻さん(群遊会)、入江さん(根がかりクラブ)とご一緒させて頂いた。川上さんと本当にゆっくりお話出来たのは、この時が最初で最後だったかも知れない。
「まっちゃん、俺はね、年初めの渓は佐渡、締めくくりは八久和。これが定番なんだ」
と言っていた。これほどの人が言うんだから、この時期の佐渡は間違いなく楽しいはずだ。そう期待を胸に様々な事を教わった。


2002年

 今回は、その思い出の佐渡に行った。
 何故か不思議とこの島には神がかった雰囲気を感じる。歴史的にも日蓮宗、キリスト教、能、島流し等々、様々な顔を持つ島だ。

 さて、今回のメンバーだが、どんな繋がり?と疑問に思うかも知れないが、実は深町さんは自分の会社に偶然にも働いていた仲間だったのである。同じ趣味をもった人間同士理解しあうのに時間はかからず、とんとん拍子で今回の計画が決定した。
 普通に考えれば、企業戦士たるものこの年度の締めの時期に有給を使って佐渡に行くなど考えがたい。同行するメンバーは必然的に皆無に近い。数名の個別交渉にもあたったが、全滅。

 出発の晩、新潟港へ向かって関越を走行中難はあったものの、朝方無事に新潟港到着。雪が降ってる。そして佐渡の両津港に到着。やはり吹雪いてる・・・・・。
 テン場へ向かう途中のスーパーで名物¥150/パイの紅ズワイガニやら酒を買いに立ち寄ると宇渓会の山本さんご夫妻や大田さんご夫妻、ネコちゃん倶楽部の金子さんに偶然出会った。聞いてみれば同じフェリーに乗って、同じテン場に向かうのだと言う。
 ご一緒させて頂く事になりテン場では様々お世話になった。更には本来は!取材が無ければ私の憧れの瀬畑翁がいらっしゃる予定だったとか。

 1日目は雪中のテン場を取るための下草処理と行者ニンニク採りに終わった。やはり1週早かったのか、行者ニンニクはキープサイズはあまり無かった。篠原さんや荻野さんから頼まれた分くらいは・・・と思い、探した結果幾つかの際どい場所に群生した畑状態の行者ニンニクを見つけた。
 しかし、恐ろしい事に群生してる行者ニンニクの近くには、必ず直径60CMはあろうかと言うかつて見た事もない、大きな大きな熊さんのイチモツ(2尺クソ)があった。
 冬眠を終えた熊は腹の中のモノを出すために、行者ニンニク等の繊維物をたらふく食べて全て出し切ってから新しいシーズンの体調準備をするとは聞いた事がある。時期を間違えれば私も「アンビリーバボー」な恐怖体験をするところだった。

 夜は宇渓会の山本さんご夫妻、上田さんご夫妻、ネコちゃんクラブの金子会長達にカレーライスをはじめ絶品料理をご馳走になり、何だかんだで、寒冷の中、一升瓶が空になる。
 ご夫妻や普段一緒してるメンバーだけあって、漫才でも聞いてるかのような居心地の良さだった。



 2日目の朝。天気は良好。
 ポカポカ天気の中で朝食を取ると、その風景や焚き火に癒され、腰に根が生えそうになるが、気合を入れなおす。危うくいつもと同じ展開になるところだった。テン場で乾杯をすると釣りはどうでもよくなる病だ。
 気を入れなおし、釣りに出かける。佐渡の川は流程が短いのに同じ川の中でも河口付近はアメマス系の青いイワナ、上流域はオレンジ色のイワナ、源流部は赤いイワナとその姿を変えるため楽しい釣りが出来る。

 話を戻し、いつもの川に入ろうとするが、アプローチ入口が見つからない。3m近い雪に埋もれてたのだ。
 上り口の入口にはウサギ?たぬき?の足跡しかない。
「しめしめ、これは自分達が今シーズン初の入渓か!?萌え〜!!」卑しい下心が騒ぐ。
 かすかな記憶を元に雪に埋もれたルートを探してアプローチをしてると、途中から目新しい足跡が!? 「なえ〜!!」とモチベーションが下がりつつも入渓。足跡に積もる雪を見ると前日の入渓だと推察。「前日なら、まだ平気か。」

 深町さんは、さすがに山屋さん出身の沢屋さんだけあって遡行能力はとても着いて行けないほど高い。う〜ん硬派集団「カヌ沈隊」恐るべし。
 入渓し竿を出すが、先行者のせいか、本来の活性の良さはなかった。放流してない貴重な岩魚に対して、もう少しキープの配慮が欲しいものだ。
 魚止めらしきポイントまで結局、深町さんは2匹とバラシ数匹。それでも本人は「満足」だと言って頂いたので、次は行者ニンニク探しに行く。

 佐渡では行者ニンニクは地元JAも扱う特産品だが栽培はして無いらしく、全てが天然物である。しかも自生が難しい山菜で、種から発芽まで3年かかるらしい。従って、これも翌年以降を考え採り方にも細心の注意を払う。

 そうこうしてるうちに、日が暮れ始め楽園での最後の宴会のゴングが鳴る。
 今夜は常夜鍋という鍋をご馳走になった。昆布出汁を取って水と酒を半々にするという贅沢な鍋なのだ。そこへ、ほうれん草を入れながら豚シャブをポン酢で食べる。絶品の旨さである。毎晩食べても飽きないという事で付いた名前らしい。
 お返しに自分はピエンローを作るという鍋合戦ナイトだった。
 1日目と違って風のない夜だったので、サドだけに焚き火以外にロウソクの火を灯す。う〜ん、なんてサドなんだ!

 子供の頃、学校から帰ると玄関にランドセルを放り投げ、外に飛び出したっきり夕食まで戻らなかった。今も大差はない。スーツを脱ぎ捨ててザックを担いで山に行く。
 大自然の中で1日にやる事は「釣り」「行者ニンニク採り」「酒呑み」 この3つだけ。なんて贅沢なんだ!
 更に今回もメンバーは最高。やはり、どこに行くかも重要だが、誰と行くかが旅を左右する。

 テン場から見る風景は、川上さんと見たその風景のままだった。
 これからも、遊び続けてもらえる渓であり続けてもらうために、教えを引き継いで行きたいと、当たり前の事を当たり前に改めて思った瞬間だった。


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