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 新潟県 女川
  2006/06/10〜11


  佐藤さん、木皿さん、遠藤さん
              (西仙台渓流クラブ)

  川久保、伊藤、高野、田辺
(渓道楽)





Text  :    田辺
Photo :   高野

「おう〜、ナベちゃんかあ、良かったな帰ってこれて。」「また懲りずにお付き合いくださいね、少しずつでもお気持ちが前向きになったら誘ってくださいね。」
昨年の9月中旬、神戸から大宮への転勤報告の会話が川上顧問との最後の会話になってしまった。
源流の世界の後継者として身内同然に可愛がっていた斉藤さんを同行した渓で亡くしてしまった川上顧問の本当の心中など私ごときに理解できるはずもなかった。そして私自身、源流釣りを生涯の趣味として続けていく気力も失せていたのだが、この遊びをしたいがためだけに神戸赴任当初から形振り構わず関東、東北への転勤希望を出していたのだ。
こんな状況でも心の師には努めて明るく報告しよう。ちょっとした勇気を出しての電話だった。

渓遊びについてのイロハを親も同然の愛情をもって教えていただいた顧問が突然亡くなり、会としての存続も危ぶまれたのだが、忘年会、初釣行で会員同士お互い酒を酌み交わす中、今シーズンから源流トレを実施する事について会員達は賛同してくれた。それは今後とも渓道楽として活動して行こう!という会員達の強い意思にも思えた。

場所は今年の積雪の多さと我々の体力面などを考慮して女川の蕨峠越えとした。
実は当初第一土日の予定であったが、私も伊藤君も仕事でキャンセル・・・そこで急遽第二に延期となったわけだが、極端に参加者が少なくなってしまった。この件に関してはみなさんに大変申し訳ないと思っていたのだが、実は前週に都合のつく会員同士で同じルートをたどってきたとのこと。「うん、なかなかやるじゃないか!」と思ったが、実は「雨男のナベと一緒じゃトレーニングにならずに車止めでの宴会に終わってしまうから・・・。」と日程調整した会員もいたとかいないとか・・・。(笑)
案の定、天気予報はあまり思わしくなかったのだが、川久保さん、高野さん、伊藤君と4名で東北道をひた走る。
3年ぶりに訪れる林道は以前よりかなり荒れた感がしたが慎重にゆっくりと進み車止めへ・・・とそこにはなんと既に3台もの車が!。そして土砂降りの雨・・・。(笑)参加者の6つの瞳が私に突き刺さる!!!(爆)
「いやあ、この雨は明け方にあがるよ、それにきっとこのナンバーからして昨日ウチの掲示板に書き込みあった迷子のサトーさん達だよ、心配ないって、ダイジだあ!。」何の根拠も無いけど、一応今回のリーダーとしては前向きに事を考えなければ・・・・。川上顧問もいつもこんな調子だったしね。(笑)
幸い雨は上がったが、尾根からの見晴らしは良くなかった

案の定???6時頃から雨は小止みになり、そして予想通り3台のうちの2台は西仙台渓流クラブの「迷子のサトーさん」こと佐藤さん、木皿さん、遠藤さんだった。よかったよかった!、これでオサカナさんの顔も拝めるかもね。
全員が初対面であり、山渓の先輩達ということで最初の挨拶では多少緊張したけど、山道を歩き始めてうっすらと汗がにじむようになる頃にはずうずうしいかもしれないが完全に1つのパーティーになっていたように思う。
相変わらずどんよりとした天候と、時より稜線を吹きすさぶ強風に歩みを止めると寒気がとまらない中ではあったが、トップを行く伊藤君の絶妙なペース配分で快適に本流出合いに到着した。
「なんじゃ、この濁りは!!!」増水は予想の範疇であったが、本流は泥濁り・・・ここから白沢のテン場は程近いのでしばらく焚き火をしながら濁りの回復を待ったのだが、天気予報に反してお空は一向に回復の兆しがない。こんなとき「雨男」がリーダーだと前向きな決断ができないのであります。(苦笑)佐藤さん達にもご承諾いただき、ちょっとランクは落ちるが帰路が確実に確保されているこの地を宴会場とする。
このとき未だお昼前、「しまった、酒の量が少なすぎた!(自爆)」
佐藤さん、木皿さん、遠藤さんはみなさんテンカラオンリーということでこの濁りではどうにもならないのでテン場周辺で山菜でも探しながらでまったりされるとのこと。








渓までもう少し。
ここからは長い下り坂が待っている。
遥か下に女川の流れが見えた。           
清らかに透き通る流れを期待していたのだが・・・。









渓へ降り立ち重いザックを下ろすことができた。
柔らかい砂地でピンソールを外す面々。
やはり本流は濁っていた。       
スノーブリッジが崩壊したのだろうか。










ブナの森にテン場を設営する。

一応オサカナさんも食料計画にはいっているので、我々は泥にごりの本流を渡渉して竿を出すことにした。
昨シーズン全く竿を出すことが無かったためか、はたまた根本的に下手なのか、なかなかオサカナさんは顔をだしてくれなかったのだが、さすがに朝日の源流。上流にいくにしたがいアタリが出だし、それぞれが良型の源流イワナを手にする事ができた。








泥にごりの本流を渡渉し、原始の渓に心奪われる。
しかし、自然は厳しい。水は身を切るような冷たさだ。
ここぞというポイントに竿を出して行くが、魚信は無い。








美しいタニウツギ。
山深いここでは、6月でようやく本格的な春なのだ。

2年ぶりの岩魚に顔もほころぶ。
全く釣れない本流に見切りをつけ、支流に足を踏み入れた。
そこで、ようやく岩魚に出会えた。
雪代に磨かれた美しい岩魚。









交代で釣りあがると良型岩魚が次々と竿を絞った。
岩魚は渕尻に出ているようだ。  
好ポイントに竿を出す、伊藤会員。








丸々とした尺上が来た。
これで山越えの苦労もフッ飛んだ。
魚止めの滝に竿を出したとたんアタリが出た!

適当な時間になり、喉もいい感じで乾いてきたので、数尾の食べごろサイズをキープしてテン場に戻ることとする。途中、ふと気が付き空を見上げてみるとなぜかお天道様が顔を出し、明日の好天が期待できるほどになっていたのには高野さんと顔を見合わせてただただ苦笑いするしかなかった。

皮肉なことに釣りをやめたら陽が差してきた。

テン場に到着すると佐藤さんご一行は心なしかすでに宴会モードに突入済みだったような・・・。遠藤さん、木皿さんもいい感じの仕上がりを見せていた。(失礼しました!)
無理もないよな〜、雨&増水承知で我々に付き合い、案の定竿が全く出せなかったんだから。
でも不伐の広葉樹の森で遊べればたとえ釣りが出来なくても心底楽しめる。そんなみなさんを見習いたいし、我々も似たり寄ったりのメンバーなのでこれからも懲りずにお付き合いくださいね〜!。
さて、さっさと着替えてあとはお待ちかねの焚き火宴会だ!。徐々に日が暮れ、心地良い森の風と焚き火の匂い。しばしの間ではあるけどカイシャや家庭を忘れられる心地よいひととき。そんな時間をここ2年近く忘れていた。「やっぱり辞められそうに無いな!この遊び。」

昨日は(も?)明るいうちから散々呑んだくれ、何時に寝たのかも全く覚えていなかったが、すがすがしい朝を迎える事ができた。
帰路、この渓恒例の急登に喘ぎながらも時より稜線を駆け抜けるさわやかな風。やがて平坦なブナの森のなかでふと振り返ると、
「生きろよ!」「生きろ!」確かに聞き覚えのある声がしたような気がした。
朝のテン場で記念撮影。
前列左より、田辺、高野、佐藤さん、伊藤。後列左より木皿さん、川久保、遠藤さん。
帰り道は急登から始まる。幸いに曇り空で暑くも寒くもない、絶好の急登日和。(笑)
ブナに励まされ、どうにか登り切った。
飯豊の山々が微かに顔を出す。
稜線を吹き抜ける風が我々を見送ってくれた。
ブナの森に続く踏み跡を辿る。
森を後にする足取りはいつも重たいのはなぜだろうか。
尾根道に咲く山ツツジの美しさに心癒される。


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