6月は気の抜けない仕事があり、毎年釣りに行けず仕舞である。その分、7月以降は誰が何と言おうと、失業しない程度、家庭崩壊しない程度に渓で遊びまくってやろうと誓ってるのだ。上司もそれを知ってか「終わったから休みを取って、充電して来い」と言ってくれた。
自分は当初から、ここは湯井又に行って山菜と岩魚三昧を決め込んでいた。しかし、重大な問題があった。鱒淵林道の土砂崩れによる通行止めである。
市役所に問合わせると「一般向けには開放してない。復旧の目処も立ってない」との事だった。
歩けば行けない距離ではないが、数日前になって日に日に天気予報が変わる。「曇り時々雨」->「曇り後雨」->「雨」 同行するメンバー全員が予備日を設けられる訳ではない。従って、増水による徒渉に影響の少ない場所を選定する必要があった。
荻野さんから挙がって来た候補は「末沢」「荒川」等だった。
いずれも、行ってみたい場所だったので、経験値のある諸先輩方の経験に判断を委ねた。結果、荒川へ行く事になった。
メンバーは荻野さんと田辺さん(以下ナベさん)に急遽、参加が決定した根がかりの原さんと、最高のメンバーである。荻野さんやナベさんと渓泊りするのは2年振り。原さんと渓でご一緒するのは今回が初めて。楽しみな遡行となった。
天候は雨だが、幸いにして川に濁りはさほど入ってない。しかし、入渓仕度をしてると雨が激しくなってきた。ひどくなる前に入ってしまえと入渓する。
山の空気を吸いストレスを吐き出す呼吸法で正常な自分に戻っていく。雨で蒸した空気は鼻につく濃い香りで満ちていた。大木や草木の中で動物としての人間に戻っていく気がする。
トップを歩いたので風景が良いが、あまり見惚れすぎていたせいで、皆のペースを乱したようだ。すぐ後ろにサッカーで鍛えた健脚の原さんの足音が迫る。
角楢小屋までは橋を3本渡れば着くと言うが2時間の予定が、1時間弱で着いてしまった。
3本目の橋は丸太の1本橋で両サイドの針金は明らかに張ってない。下を見下ろすと水量は大した事ない。渡渉出来そうだ。
渡渉した先に沢が入っている。岩魚が泳いでるのが確認出来た。「竿を出そう!あれ、餌!?」荻野さんから餌をもらい竿を出すが釣れない。
一方、皆は倒木から生えた平茸を採ってる原さんを見守ってる。満面の笑みだ。美味そうだ。今夜のつまみ2品は頭の中で完成していた。
|
ヒラタケ |
新しい角楢小屋 |
元来蕨小屋だったのだろう。
周囲には蕨が群生してた。
老朽化によりH8年に修繕されたという。 |
3本目の橋から2分程度で角楢小屋に着いた。小屋は囲炉裏付きの完璧な装備。
暴れ川なので濁りが出始めたら釣りにならないと、早速2手に分かれて釣りに繰り出す。荒川本流をナベさんと原さん、角楢沢を荻野さんと自分。
荻野さんは開始早々に尺岩魚を上げる。自分はアタリはあるものの上がらない・・・・・。荻野さんはそれでも暖かい眼差しで見守るように見ている。そう言えば初めて静岡でご一緒させて頂いた時もそうだった。下手な自分が準備や根がかりしてると、荻野さんは見守るようにゆっくりと焼酎を飲みながら「いいよ。ゆっくり釣りしてなよ」と言ってくれた。
話を戻し荒川の岩魚についてだが、結構放流されてるのか短い流程のポイントポイントで岩魚が違う。ニッコウ岩魚ではあるが、黄金色の岩魚もいれば色にあまり特徴のない岩魚もいる。しかし、いずれもキレイだった。荻野さんに言わせると石滝の岩魚に似てるそうだ。
釣り進むと冷気が帯び始める。冷気を帯びると魚影は薄くなり、型も小さくなる。
少しすると雨がひどくなったので小屋に戻る事にした。
行きにあったはずの雪渓が帰りには無くなっている・・・。話しにはよく聞くし、大きさは大した事のない大きさだったが、タイミングが悪ければ・・・と思うと気分が悪い。
|
|
往路の雪渓 |
復路の雪渓 |
ナベさんチームが戻る前にチビチビ酒を飲みつつタープを張って準備をする。すると荻野さんが「まっちゃんヘビ!?」 準備をしてると2匹のマムシ君と1匹の青大将君に遭遇。「食っちゃいましょう」とマムシ君の首を棒で押さえつけるが、食べないとおっしゃる。
「えっ!?」状況は既に地雷に足をかけた状態。
これを離せば奴は確実に自分に襲いつく。コブラ対マングースならぬマムシ対ま っちゃん。
「どーするのぉ!?俺!」カードは3枚「逃げる」「戦う」「謝る」
|
「逃げる」
マムシはバカボンのパパのように渦を巻いて毒牙を剥いて追ってきた!
負けじと足に渦を巻いて逃げる俺。 お互いに肩で息をして向かい合った。
「お前、漢(おとこ)だな」「漢(お前)こそ」そして仲直りの握手をした。「 バクッ!」 奴に毒があるのを忘れて!
「うわぁー!てめー!!何て事しやがるんだ!」
「戦う」
棒を離した瞬間に奴は、毒牙を向いて飛び掛ってきた。負けじと棒を振りかざす 俺。
死闘を繰り広げた末に、男同士の友情が芽生え俺達の周りにはキラキラとした星 が。
仲直りの握手をした。「バクッ!」 奴に毒があるのを忘れて!
「うわぁー!てめー!!何て事しやがるんだ!」
「謝る」
土下座をついて誤り倒したが、許してくれないので、死んだ振りをした。
ここぞとばかりに「パクッ!」「うわーぁー!てめー!!何てことしやがる!」
死んだ振りはヘビには通用しなかった。
|
間もなく、ナベさんチームも戻って来る。聞けば、口からカエルの足がはみ出した食いしん坊な尺2寸程度の岩魚が上がったとか。
お互いの報告をしてる間もなく宴会開始!!
「結構酔っちゃったねぇ〜、今何時?」
「11時半」
次の瞬間全員心の中で「やばい夜の酒がなくなる。」と思ったか思わなかったか。
昼寝をして気付くと夕方の4時。
さー!宴会本番の開始!!星空が見えず、焚火が無いのは少し寂しいが、メンバーがメンバーだけに、旨い料理と酒に会話が弾む。
笑いも涙もある 会を超えた仲間である事を再認識した夜だった。
|