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 埼玉県 荒川源流入川
  2011/04/23〜24


  玉木さん(瀧友会)
  横倉、斉田、高野(渓道楽)




Text&Photo: 高野

今年は今までにない早い出だしだった。
源流に入るのは例年だと6月がいいところなのだが、ここ数年はたいした回数行けてない状況から考えて、少しでも早く始動することで、気持ちを奮い立たせようという考えだ。
都合良く「GW前の入川に行こう」と横倉さんから話が出ていたのと、斉田さんにも誘われていたから、行先はすぐに決まった。
入川には柳小屋という無人の避難小屋があり、自由に使えるというのも春先の寒い時期にはありがたかったのも理由の一つ。
ただ、問題なのは私と斉田さん。この2人が組んで全日が好天だった試しがない!
最近ではタカ&サイはヤバイと評判だった。私は昔から雨男と言われていたから、斉田さんには罪はないのかもしれないが・・・。
週間天気予報はだんだんと悪いほうに変わっていき、ついに土曜日は雨マーク。
思った通りの展開だった。

23日(土)深夜、斉田さんの車に乗せてもらって、たまちゃん(玉木さん)と3人で車止めに到着。
さいたま市から一般道で3時間掛からずに着いてしまう近さも魅力だ。
栃木からの横倉さんはまだのようなので、朝まで仮眠する。
最近は年のせいか寝ずに歩くのはキツくなってきた。それとザックの軽量化も必須だ。
始めたころはよくわからずに不要な装備がわんさか入っていたのだが、ようやく不用品は持って行かなくなった。そしてさらなる軽量化のため、重量表示とにらめっこしながら装備をチョイス。
自慢はオスプレイのザック。60Lで約1.2kgしかない軽さ。強度さえ十分ならザック自体の重さは軽いほうがいいに決まっている。
このザックはお勧めである。
まあそれはさて置き、朝までぐっすり仮眠を取って出発に備えた3人だった。

周囲の明るさに目を覚ますと、なにやらポツポツと音がする・・・。
やはり天気予報通り、タカ&サイの釣行は雨だった。
が、幸い大石川や大深沢のような何メートルもの増水になるような大雨ではなかった。
しかし、この時期の雨のいやらしさは、この後思い知ることとなる。

7:00、小雨の降る中を我々は出発した。
しばしの林道歩きの後、道は森林軌道のレールが残る軌道跡へと下っていく。
以前の釣行記でも紹介したが、戦後から昭和40年代までの高度成長期、ここには切り出した木材を運ぶ森林軌道があった。日本各地にあった森林軌道は、その後次々とトラック輸送に切り替わり消えていった。
ここも同じように廃止されて今に至るが、レールはそのまま残っている。今ではそのレールは土止めとして役に立っているようだ。
鉄道が通っていただけあって、軌道跡はほとんど平坦で歩きやすい。この道は赤沢出合まで続いているが、そこからは登山道となり一気に高度を上げて尾根に出る。

雨の赤沢出合で小休止し、斉田さんとたまちゃんに荒川起点の碑を見せてあげる。
そして重い腰を上げた我々は、九十九折れの登山道へと踏み込んだ。
相変わらずシトシト雨が降っているので、合羽は脱げない。
安い合羽は汗で内側もビッショリ。ヒーヒー喘ぎながらも尾根までたどり着いたのだが、そこは冷たい風がビュービュー吹きつける場所だった。
たちまち汗が冷えて凍えだす。山で遭難死するのが分かった気がした。
じっとしてたら寒さで動けなくなってしまう! もう早々に出発〜。
ここで私は絶対にゴアのレインウェアを買おうと心に決めた。
トウゴクミツバツツジの美しい花が出迎えてくれた
























軌道跡を行く
ほとんど平坦だから楽である


























 荒川起点の碑
 ここから大河荒川となる

急登を終えてひと息つけた
道は少し穏やかになるが、このあとまた尾根まで登りつめるのだ


重い足取りで進む私。初めはしっかりしていた登山道も、だんだんと荒れだしてきた。途中何箇所か大きく崩れて道が無くなっている場所もあったが、誰かが張ったトラロープを補助にして切り抜ける。
それにしても金山沢下降点はまだか。「こんなに遠かったっけ?」と横倉さんと話しながら行くと、ようやく下降点に到着。
ここからはそんなに掛からなかったような気がしたが、行けども行けども柳小屋は見えず。
またしても「こんなに遠かったっけ?」と言いつつ、アップダウンを繰り返す道にいいかげん嫌気がさしたところで、柳小屋が見えた!
ここまできっちり5時間掛かっていた。
























だんだんと登山道が荒れてきた
ついには沢を横切るところで崩壊
ここ以外にも何箇所かあった


最後の登山道をゆっくりと進んでいくが、体はずぶ濡れでガタガタと震えが来る。
小屋に入って速攻で乾いた服に着替えて、生き返った気持ちにホッとする。
ホントは着替えの前に小屋前で竿を出したかったのだが、凍えて限界だった。
ただ、他の3人は元気に釣りをしている。流れは増水して濁りも入っていたが、斉田さんがいきなり美しい秩父岩魚をゲット!
それを小屋の中から望遠で撮影してノルマ達成(笑)
小屋の前で橋の上から竿を出していきなりゲット!
さすが斉田さん。しかも秩父岩魚だ!

30分ほどして全員が戻ったところで、早々と宴会へと突入した。
こんな雨の日は小屋ほど快適なところは無い。
気温も最初は8度しかなかったのが、料理をしているうちにだんだん上がって、それほど寒くなくなった。
これくらいなら夜も快適に眠れそうだ。

久しぶりの源流行。あそこの渓ではどうだったとか、あんなことがあったなぁ〜と話は尽きない。
そして、みんなが作る美味い料理が次々出てきて、あっというまに夜が更けていった。

明けて24日(日)。外を見ると昨日までの天気はどこへやら。青空が広がって春の日差しが山に降り注ぎ峰がキラキラと輝いている。
清々しい朝にシャキっと目が覚めた。

良かった、これで気持ちよく釣りができる。5時間かけて来たかいがあった。
でも岩魚が釣れるかどうかは別だけど。
しかも今回は、ただ岩魚が釣れればいいわけじゃない。
絶対に秩父岩魚を釣りたい!!
幸い昨日斉田さんが釣っているので、釣行記的にはとりあえずOKなのだが、やはり自分でも釣りたい。
4人は朝飯も食べずに入川に竿を出した。このまま釣り上がると、流れはすぐに真ノ沢と股ノ沢に分かれる。左手の真ノ沢が本流で、山梨県・埼玉県・長野県の3県の境にある標高2475mの甲武信ヶ岳へと突き上げる。
ホントは最初の一滴を見たいのだが、下流からの遡行だと一泊では無理だという。
実は心に思っている計画がある。故郷の埼玉を流れる荒川を、最初の一滴から東京湾の河口まで辿ってみたいのだ。道がないところは徒歩で、その後は自転車でだ。
源流部を除けば全く問題ないくらいのことなんだけど、最初の一滴は手ごわい。
と、そんなことを想いながらも竿を出していくが、一向にアタリがない。
昨日の増水から平水に戻って絶好の状況だと思うのだが、どうしたのだろう。
柳小屋上流を釣る横倉さん
入川には詳しくて、今回の案内役


























 真ノ沢と股ノ沢の出合
 左が真ノ沢
 登山道の吊り橋が掛かっている


























真ノ沢吊り橋と真ノ沢の流れ























 股ノ沢の流れ
 水量的には真ノ沢よりちょっとだけ
 少ないくらいだろうか

全然釣れずに二股まで来てしまった。
そこで股ノ沢を釣るたまちゃんと別れて、3人で真ノ沢に入った。
流れはほぼ二分されたようで、水量もだいぶ少なくなった。
それでもそこそこの流れで、岩魚が潜んでいそうなポイントが無数にある。
しかし、なかなか釣れない。
真ノ沢に入り竿を出す斉田さん


好ポイントが続くもアタリが無い

























 横倉さんも頑張るが・・・


「おかしいねぇ、出ないねぇ」といいながら30分も釣りあがっただろうか。
横倉さんに良型が来た!
痩せてはいるが8寸ほどのオスの秩父岩魚だ。
秩父岩魚の特徴である朱色に近い鮮やかな斑点と、ヒレの色。
ホントに美しい。
なぜこの地域の岩魚だけが、こんなに鮮やかな色をしているのだろうか。
そう思いながら何枚もシャッターを切った。
ついにキタ!
しかも良型だ!


鮮やかな秩父岩魚
とても美しい

こちらはまだ幼い顔をしている

そこからポツポツとアタリが出始めて、斉田さんも釣りあげる。
しかし、私の竿にはアタリも無い・・・。まあこれがいつものことなんだけど。
斉田さんはたまちゃんの様子を見に一足先に引き上げた。

半分あきらめながらも好ポイントに竿を出していくと、なにやら手ごたえあり。
久しぶりに味わう岩魚の引き。
軽く合わせてあげると結構重い。
「来たよ、結構いい型だ〜」と横倉さんに知らせる。
写真を撮ったのちにメジャーを当てると・・・
「泣き尺だぁ〜」
わずかに尺には足らない29cm。しかしとっても嬉しい。ようやく念願の秩父岩魚を釣ることができた。もうこれで満足!
いっぱい子孫を増やしてくれよと願って、流れに戻してあげた。
ついに私の竿に秩父岩魚がキタ!
泣き尺の立派なオスだ
まだサビが残っているようだ
特徴的なオレンジの斑点
うう、肝心なところでピントが甘い〜



























 早春の真ノ沢
 芽吹きにはもう少し掛かりそうだ
清冽な入川の流れ
春の日差しにキラキラときらめいていた


柳小屋をバックに
左から横倉さん、斉田さん、私、玉木さん

家からこんなに近いところに、こんなに素晴らしい渓がある。
ぜひまた秩父岩魚に出会いに来たいと思った。
そして荒川の最初の一滴にも・・・。


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