今年はしばらくぶりにいいペースで源流に行けている。
7月の連休釣行は遠出のチャンス。今回は岩手県の小出川に行くことになった。
メンバーは瀧友会の平澤さんと渓道楽会員の斉田さんだ。
またまたタカアンドサイでの釣行となったが、はたして雨は降るのだろうか・・・。
車止めへとたどり着いた頃にはすっかり夜も明けて、素晴らしい青空が広がっていた。
前回の女川から1か月以上開いてしまい、またまた身体が元に戻ってしまった感があるが、
登りだしの急登は思ったよりも短く感じた。
この道を辿るのは何年ぶりだろうか。前回来た時はもっともっと長く感じたと思う。
息を切らせながらも上を見上げると、樹齢数百年のブナやミズナラなどの巨木が、大きく枝を広げて太陽の光を全身に受けている。
瑞々しい葉はさんさんと降り注ぐ陽光に光り輝き、命の力をみなぎらせている。
その葉の間から見える空はどこまでも青く、ぽっかりと浮かぶ雲が良いアクセントになっていた。
やがて稜線の道に出ると、次々に道に落ちているツキノワグマの糞・・・。このエリアはクマの生息密度がかなり高いようだ。
糞もまだ瑞々しいようなので、今朝のものらしい。
だが、幸いバッタリ出くわすこともなく、道はだんだんと小出川に向かって下り始めた。
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見上げれば瑞々しい緑に青い空。
こんなに素晴らしい天気もそうそう出会えない。
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背中のザックは重いけど、渓へと向かう心は軽い。
素晴らしいブナの森が私たちを歓迎してくれる。 |
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今年は頑張って山頂へ。
そして見晴らしは最高だ。東北の穏やかな山々がどこまでも続いていた。
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心が癒される景色。
渓もいいけど、山もいいよなぁ。
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渓に向かってどんどん下って行くと、
ブナはますます立派になり、
ちっぽけな我々を見下ろしている。
ここ仙北街道は、数百年前に旅人菅江真澄の
歩いた道。
このブナも幼木の頃にその姿を見ていただろう。 |
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暑いときはコレ!
最高〜。
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やがてひんやりとした空気が辺りをつつみ、沢が近いことを教えてくれる。
沢に出ればテン場まであと少し。走るイワナを見ながら、水しぶきをあげて下った。
テン場に着いたら早速タープを張るのだが、それにしてもこのテン場はゴミだらけ・・・。
ビールの空き缶やガスボンベ、果てはテントまで捨ててある。
「ひどいなこりゃ」
「今までのテン場で一番ゴミが多いかもな」
「・・・」
もう呆れて言葉が出ない・・・。
さあ、気を取り直して釣りへと出かけよう。
本流は滑床の多い渓相で、ポイントは少なそうであった。
我々はしばらくは竿を出さずに行こうと決めて、どんどん歩いていった。
すると何やら水の中に目立つものがある。
「あれ、なんだろ」
近づいてみると、なんと流れに浸した網にイワナがデポしてある・・・。
そのイワナはまだ元気に生きていた。
ということは間違いなくイワナが釣られたのは今日だろう。
「ガビ〜ン! マジで〜」
「先行者いるの?」
「どのルートで入ったのかな」
「川通しか?」
と3人で推測してみる。
しかし、いくら推測したところで先行者がいる現実は変わらない。
そして先行者の姿は見えず、この先どこまで行っているのかも不明だった。
「追いついて奥の二股の片方釣らせてもらう?」
「でも二股まで相当距離あるよ」
「釣らずに行って2時間くらい?」
先行者の人数も不明のため、本流はあきらめた。
「支流しかないね」
「大高鼻沢? 栃川?」
「栃川は歩いちゃったから無理でしょ」
「じゃあ大高鼻沢だね」
「滝、あるね。出合からすぐに(^_^;)」
「ま、行ってみよ」
というわけで、3人は支流の大高鼻沢に入ることにした。
地図で見ると大高鼻沢は栃川出合より下流のようだ。
左岸に1本小さな沢があったのだが、栃川出合よりも上流。
これは違う沢?
もっと下ってみた。しかし下流にはそれらしき沢が無い。
どうも地図が間違っているようだった。
となるとさっきの沢だなと、また遡る。
なんだかテン場出てから、1時間くらい無駄にしているような気がする。
今度こそ間違いなく大高鼻沢へと入り、早速竿を出した。
沢は小さいがそこそこ魚はいるようだ。
キラキラと輝く透き通った流れから出てくる、美しいイワナ。
小さな滝をミサイルのように飛び越そうとするイワナ。
豊かな自然の姿がここにある。
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美しいイワナ
遥かな昔からこの水系で命を繋いできた
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無駄のないフォルム
イワナは渓流の王者だ
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3段になっている滝の下で、とっても珍しいことが起こった。
平澤さんと斉田さんが並んで釜に竿を出していると、平澤さんの竿にアタリがあった。
そしてすぐに斉田さんにアタリが。
見ていた私は「お祭りか?」と思ったのだが、イワナは鉤に掛かっていた。
しかし、2人の仕掛けはその一尾のイワナの口に・・・。
「こいつエサ2つ食ってるよ」
2人のエサを同時に食べるなんて、なんて貧欲なイワナだ。
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大高鼻沢で静かに竿を出す平澤さん
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2本の仕掛けに掛かったイワナ
長年やっているが、こんなことは初めてだ
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奥にあったのは平澤さんの鉤だった
だからこれは平澤さんの釣果?
それとも0.5尾? |
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さて、まだ時間はあるから上を目指そう。
釜は深いが斉田さんがヘツって突破。
続いてヘツろうとして泳ぐ平澤さん。
今日は暑いから泳ぎも爽快だ。
そこを越えると5m2段の滝が目の前に現れた。
遡行図によると右岸を巻くとなっているが、登ってみてもトラバースできそうもない。
遡行図は簡略すぎてどこから巻くのかイマイチ分からなかったので、強引に直登した。
帰りはちょっと嫌らしい感じだが、本流まで一気に巻いちゃえばいいだろう。
しかし、この考えが1時間のアルバイトをする羽目に。
だが、苦労して直登した滝上にアタリは無かった。
あれが魚止めだったのか・・・。
ここからどうやって本流まで戻るかだが、さっきの滝を降りるのはちょっとしんどい。
地図をみると右岸の尾根に登ってしまえば、なんとか本流に降りられそうということで意見が一致した。
右岸に取り付きガシガシ登ると猛烈な藪尾根に出た。支尾根を探るがスッパリ切れていて降りるのは不可能だった。
藪漕ぎしながら別の尾根に取り付き、本流へと戻ることができた。
2段5mの滝下を釣る斉田さん
青い夏空の下、源流で釣りをするのは爽快だ! |
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ちょっと苦労して直登したのだが、滝上にイワナはいなかった
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支尾根を降りるが行き詰った
新たなルートを検討する |
テン場に戻って一人栃川へと出かけた。今度はテンカラ竿でやってみよう。
最初のポイントでは不発。次のポイントに振り込むと毛鉤がゆっくりと流れていく。
アタリは分からなかった。ラインがグっと引かれたので軽く合わせると、竿がしなった。
釣れたのは8寸の綺麗なイワナ。
今日は誰もキープしてなかったので、晩のおかずにすることにした。
これで満足して納竿できる。
この後はテン場でまったりする時間だ。
やがて夜の帳が降り、辺りが闇に包まれる。
今日は満月だが、月は見えない。
すると小さな光がスーっと飛んでいく。
ヒメボタルだ。
光は一つ、また一つと増えていき、何匹ものホタルの舞いをうっとりと眺めながら、夜は更けていった。
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テンカラできた栃川のイワナ
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渓に咲く美しいガクアジサイが心を癒してくれる
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今日もテン場に焚火の炎がゆらめいた |
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