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 新潟県の渓
  2012/05/26-27



  近藤、斉田、高野






Text&Photo: 高野

今年も源流のシーズンがやってきた。
今年の冬は久しぶりに寒い冬だった気がする。実際、雪もかなり降った。
そうなると源流には雪渓が残って、この時期に奥に入れる渓も限られる。
そこで経験豊富な斉田さんお勧めの渓へと入ることにした。

斉田さんとは最近よく釣行している。渓道楽で最も源流に通う男であり、また大物と縁がある男でもある。
そしてもう一人。渓道楽のメンバーである近藤さんも一緒に行くことになった。
聞けば源流釣行は久しぶりだという。
今シーズン初の源流釣行。どんな旅になるのだろうか・・・。



車止めにはまだ暗いうちに着いた。道中、降ったり止んだりの天気だったが、どうにか雨は上がったようで、空には星も見えていた。
軽く乾杯して夜明けまで仮眠をしたのだが、山は冷え込んで寒いくらいだった。

辺りが明るくなるころゴソゴソと起きだし準備をする。
幸い車止めには我々だけ。いい釣りが出来そうだ。
ところがここでアクシデント。
近藤さんの沢靴の底が少し剥がれだしていた。
久しぶりに引っ張り出したそうで、劣化したのだろうか。
ただ、まだちょっと剥がれただけだし、歩きは3時間程度なのでなんとかなるだろう。

久々に背負うザックはズシリと肩に食い込む。
5時40分、3人は杣道を歩き出した。

杣道の木々の間からは、雪を被った越後の山々が朝日に輝くのが見えている。今日は素晴らしい天気になりそうだ。
杣道の終点には2時間弱で到着した。ここからは高度差100mを一気に下り渓へと降りる。
ズルズル滑る急斜面を残置ロープに掴まりながら、下降した。

杣道からは新緑に萌える山が俯瞰できた。

先人の付けた杣道を行く、斉田さん、近藤さん。

2時間ほど歩いて、そこから急下降。
気を抜くと流れまで一気に滑り落ちそうだ。


流れまであと少しのところで、ようやく傾斜が緩くなり一安心。

降りた場所は巨岩の転がる開けた河原だった。
斉田さんは一度来たことがあるらしいが、そのときは日帰りだったので下降点付近しか釣っていないらしい。
したがってテン場もどこにあるのか分からないと言う。まあしばらく遡行すれば適当な場所が見つかるだろう。
いつもに比べるとアプローチは短く時間に余裕もあるので、ザックを背負いながら竿を出していくことにした。

渓の水は透きとおり、キラキラと朝日を受けて輝いている。
白く美しい花崗岩の渓は、苔むした渓とは違った魅力で我々を迎えてくれた。

水量はそれほど多くはないが、次々に掛かる小滝や落ち込みによって形成された淵が「ここがポイントだよ!」と
我々を誘っている。

「釣れたよ〜。」
斉田さんがエメラルドグリーンの淵から、良型イワナを抜いた!
橙色の斑点が美しい源流イワナだ。
まずは1尾釣れてホっとする。

重たいザックを背負ったまま釣り上がった。
























 大きな岩が転がる渓に竿を出していく。

好ポイントの連続に歩みは遅々として進まない。
私にも渓の恵みが・・・。
今シーズンの初イワナだ!

しかし、降りたところは結構な連瀑帯だったようで、次々と小さな巻きを繰り返すこととなった。
ツルツルに磨かれた花崗岩は、手がかり足がかりが無く滑りやすい。
釜に落ちると泳ぐハメになりそうなので巻くしかなかった。

そんなこんなで竿を出したり仕舞ったりしながら行くと、大き目の支流が左岸から出合ってきた。
その出合の高くなった所に、狭いながらもテン場適地を発見。
さっそく重いザックを下ろしテン場を設営した。

ちょっと時間は早かったが昼飯を食べて、身軽になって上流へと向かう。
「靴が心配だからこの辺釣ってるよ」
という近藤さんを残して、斉田さんと出発。

まずはテン場前のナメ滝の釜に竿を出す。
すると斉田さんにとたんにアタリが出る。
2〜3尾のイワナを釣り上げて、巻道を使って滝を越えた。
その直ぐ上には滝があり、エメラルドグリーンの深い釜を従えていた。
「どう? アタリある?」
と竿を出す斉田さんに聞くが、
「無いね〜。いそうだけどなあ」との返事。
核心部まで竿が届いていないのだろうか。

振り返るとテン場の前に竿を出す近藤さんの姿が見えた。

満々と水をたたえるエメラルドグリーンの釜。
美しい渓だ。


顔を上げれば瑞々しい新緑が広がっていた。
山ツツジのピンクが彩りを添える。


その滝の上も磨かれた花崗岩の上を滑り降りるような流れが続く。
真夏の暑い時期なら、帰りはウォータースライダーが気持ち良さそうだ。
でも今の時期は、はるか上流の雪渓から融けだす冷たい水で、手を入れたただけでも痛くなるくらい。


ちょっとズルズルで嫌らしい巻きを終えて、降り立った所もすぐまた滝がある。
滝自体は大したことはなさそうで、取りつけば登れる感じなのだが、釜は深く壁はすべて磨かれている。取りつく島も無いとはこのことだ。
「連瀑帯かぁ。まあ逆にあまり釣られてないかもしれないな。」
気をとりなおして、流れに竿を入れる。

右で釣っていた斉田さんの竿が大きくしなった。
ついに大物が来たか!
とみると、けっこう良い型のイワナが顔を出している。
「取りこんで〜」という声に応えて、流れ出しに誘導したイワナをキャッチ!
斉田さんが測ると、
「29cmだぁ」
残念、泣き尺だ。

白く輝く花崗岩で形成された渓。
岩肌は悠久の流れに磨かれて、釣り人を寄せ付けない。


斉田さんが釜の底から良型を引っ張り出した!

さて、ここはどうやって越えようか。
「ちょっと偵察してきます!」と斉田さんが竿をたたんで偵察に。
大きく丸を作ってくれたので、すぐに後を追う。

目の前にはまたまたいい感じのポイントが広がっていた。
斉田さんは泣き尺を出しているので、そのポイントを譲ってくれた。
早速、核心部と思われるところへ投入する。

が、私の横でいきなり斉田さんの竿が弓なりに!
「デカイ、デカイ!」と慎重に竿を操作する斉田さん。
水面から顔を出したそいつの下顎は、しゃくれていた。
かなりの大物。尺前後は年に数回はお目に掛かるが、こいつはそれをはるかに超えていそうだ。
抜きあげるのは不可能と感じ取った斉田さん。
さすが何尾も40オーバーを掛けている猛者だけあって、慌てずに獲物を浅場へと誘導し岸にずり上げた。
しかし、なんとここで鉤が外れた!
それでもなんとか暴れるイワナを手づかみし、ゲット!
すぐにメジャーを当てる。
「よし! 38cmだ!」
なんと尺3寸近い大物だ!
久しぶりに見る大物イワナ。斉田さんにポーズを撮らせて、何枚も写真を撮る。
実に見事な源流イワナだった。

次々と現れる好ポイント!
ただし岩がツルツルで登れない。全て竿を仕舞っての巻きとなる。
























 ついに来た!
 38cmの大イワナを斉田さんが仕留めた。

 迫力ある堂々たる体躯。
 まさに源流の王者だ。

源流の流れに鍛えられた、美しい姿。

さて私の方はと言うと、そんな大物とは縁も無く、8寸、9寸程度のが数尾釣れたのみ。
もうそろそろ戻ろうかという時間になってきたので、最後強烈なS字滝共々3つの滝を高巻いて降りたところが、これまた渦巻く大きな釜を持つ直瀑だった。
ここも大物が潜んでいそうと2人で竿を出す。しかし、期待とは裏腹に全くアタリ無し。
しばらく粘ったが諦めて戻ることとなった。

テン場に戻ると薪を集めて渓泊まりの楽しみの一つ、焚火の準備だ。
流木は多く、すぐに一晩中燃やせるくらいの量が集まった。
そして花崗岩の白い渓に夕暮れが迫る頃、赤々と燃える焚火で祝杯をあげる3人の姿があった。

8寸くらいじゃ斉田さんのと比べると・・・

激しい水流にえぐられた釜を持つ滝。
ここまでで引き返した。
























 焚き火を囲んで祝杯をあげる。
 楽しい時間がそこにあった。
























明けて翌日。
今日も素晴らしい晴天だ!

今日は支流へと釣りに入る。

どうしたことか、アタリはあるのだが全く釣れない。
イワナは走るから、居るには居るのだが・・・。


結局、支流では1尾も釣れなかった。
本流ではけっこう釣れたのに、どうしたのだろうか。























 納竿場所となった美しい滑滝。

 釣りはここで終了。
 テン場に戻って撤収だ。

恒例のテン場での記念撮影。
左から、私、斉田さん、近藤さん。



























 美しい白き渓とも、ここでお別れだ。

今回も素晴らしい釣り旅だった。
斉田さん、近藤さん、また行きましょう!

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