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  山梨県 釜無川源流部
  2012/07/14-16



  玉木(瀧友会)
  斉田、高野(渓道楽)





Text&Photo: 高野

山形県の天気予報には無情にも雨マークが並んでいた。
「湯井俣で40オーバーでも狙いましょうかね」
斉田さんと淡い期待をしていたのだが、雨じゃテンションも下がるしなぁ・・・。
「予報だと関東より西、それもできるだけ南のほうが天気が良さそうですね」
なんていう打合せをした。
「じゃあ、釜無川に行ってみますか」
という斉田さんの提案で、行先は山梨県に変更となった。

釜無川は南アルプスの横岳(2142m)に源を発し、長野と山梨の県境を流れ下る川だ。
奥まで林道が通っているのだが、ゲートがあって一般車は進入禁止となっている。
したがって釜無川の源流部までは、林道を延々と8kmほどは歩かないとならないらしい。
まあ林道ならばそれほどきつい登りもなく、たぶん楽勝だろうとこのときは思っていた。
それが間違いだと現地で思い知ることになるのだが。

埼玉から山梨はとっても近い。夜中なら3時間程度あれば車止めまで着いてしまう。
山形への時間の半分だ。
その分、車止めでゆっくり眠れる。
夜中に到着した我々は車中にて、軽く宴会をして眠りについた。


早朝、ヒンヤリとして寒いくらいの山の空気を胸一杯に吸い込み、重いザックをよっこらしょと担ぎ歩きだす。
「楽勝だろ」と言っていた林道歩き。3人とも思うようにペースが上がらず、ノロノロと進む。
「まだ時間はたっぷりあるし、ちょっと支流の沢にでもちょっかい出すか。」
と林道を横切る沢へと入りこむ。
いきなりの大堰堤を巻くと、なかなかの渓相の流れが姿を現す。
しかし、全くアタリが無い・・・。
ちょっと行くと滝に行く手を阻まれた。
「ダメ、撤収〜」
あっさり諦めて林道に戻る3人。

早朝の山は霧の衣をまとって、静かにたたずんでいた。

林道の途中で一休み。
この頃はまだ元気だった。


アサギマダラだろうか。
このチョウは何千キロもの距離を渡ってくるのだ。


























 天然ミネラルウォーターで喉を潤す。

雲が多いが晴れ間も見えてきた。
かえってピーカンでなくて助かった。林道歩きは暑くてたまらない。

釜無川の本流はどこまでも砂防堰堤が続き、それによって堆積した膨大な砂礫によって死の川となっているように見える。
堰堤など無かった頃の川は、きっとすばらしい渓相を見せてくれていたのだろう。
しかし、それはすべて埋もれてしまったのだ。
そんなことを考えながらもくもくと歩き、ようやく林道終点に到着した。

しばらく遡行した河原にテン場適地を見つけ、重いザックを下ろすことができた。
テン場を作ったら早速釣りだ。

今日は長く歩いて思ったよりも疲れているので、軽く探ってみる程度にしよう。
斉田さんと2人でまずは下流に下ってから竿を出す。
だが、思ったほど反応が良くない。
人が入った形跡はないのだが、魚が走らない・・・。
「去年の大雨で流されちゃったかな」と斉田さん。
そうかもしれないなぁ・・・。

そんなネガティブなことを考えながら行くと、少し釣り上がったところで斉田さんにファーストヒット!
7寸強の綺麗なイワナだ。
その上の溜まりをのぞいた斉田さんが
「デカイのいた、デカイの!」と興奮している。
ゆら〜っと尺以上ありそうなのが出てきて、岩陰に潜っていったらしい。
これで俄然ヤル気の出た2人。

次に竿を出した滝で斉田さんが大物をバラした。
「今のもデカかったかも!」
なんと鉤が伸ばされてる!
ここってそんな大物ばかりいるのか?
もしかして大当たりの渓?

などと取らぬ狸のなんとやら。すぐ横の落ち込みに竿を出した私に、アタリが!
意外と引きが強いぞ。
上がってきたのは8寸の美しい肢体のイワナ。
これで一安心。こいつは焼き枯らし用にキープした。

























 斉田さんが釣りあげた7寸イワナ。
 とても綺麗なイワナだ。


私の竿に来た8寸イワナ。
ここのイワナはヤマトの血を引いているのだろうか。


さて、バラした滝壺にしつこく竿を出していた斉田さん。
いいかげん諦めようとしたその瞬間。いきなり竿がしなって引き込まれる!
仕掛けが短いから結構手こずっている。
おいおい、そんなにデカイのかよ?

大物は何度も釣りあげている斉田さん、今回も慎重に寄せた。
斉田さんに捕まれたイワナは35cm!
前回といい今回といい、斉田さんは「持ってる」な(笑)

「ここのイワナは元気がいいね。」
掛けた時の引きは、いつもの1クラス上の感じがする。
大きな川では無いので、流れも全然太くはない。
でも、引きは強かった。

斉田さんの粘り勝ち。
釜の底から大物を引きずりだした。
デカイ! 尺2寸弱の立派なイワナだ。
今年の斉田さんは当たり年か?!



夢中になって気がつくとテン場のそばまで来ていた。
まだ時間があるのでさらに上を釣る。

この渓は数は少ないけど、型はまずまずだ。
斉田さんに負けじと自分も頑張って尺を狙うぞ。


まずは気を落ち着かせて竿を出す。
落ち込みが連続しているから、ポイントには迷わない。
しかし、この季節なら淵尻に出ていてもおかしくないのに、全然イワナが走らない。
やはり数が少ないのか・・・。

だが、テン場の上では次々イワナが掛かった。
最初の落ち込みで8寸。次の落ち込みで9寸。そして・・・
ついに尺イワナが来た!
岩の色が白っぽいからなのか、その尺イワナは色白の美人だった。

念願の尺物も出たし、これで今日は満足。
足早にテン場に戻って、宴会だ〜。

集めた薪をガンガン燃やして、夜は更けていった。

私の釣りあげた8寸。

ようやく私にも尺物が来た。
この娘は色白美人。

渓の夜に焚火の炎が揺らめき、そのかたわらには串に刺さったイワナが・・・。
ワイルドだろ〜?
2日目

辺りが明るくなって、朝早くに目が覚めた。
盛大に燃やした焚火もすっかり消えていた。
つつくとまだ火が残っている。
細枝をくべて仰いで風を送る。
炎は再び勢いを盛り返した。

久しぶりの2泊3日の釣行。いったい何年ぶりだろうか・・・。
この前は大深沢だったが、あれは大雨で1泊で撤退。
その前はもう覚えてない。
サイトの記事を見ると大深沢が3年前。渓で2泊は早出川でガンガラシバナを見た
時だ。2008年・・・もう4年も前のことか。
時の経つのは早いものだ。

2日目に丸々1日釣りができるというのは、ホントに贅沢だ。
ゆっくりと朝飯を食べて、上流に向けて出発した。
昨日は疲れからかテン場キーパーだった玉ちゃんに釣ってもらわなければ!

昨日、尺を釣った上から竿を出す。
玉ちゃんを先頭にゆっくり釣り上がって行く。
でも、なかなか釣れない・・・。

ちょっと先行しようと巻いていたら、何やら歓声がする。
どうやら玉ちゃんが釣った様子。
後で聞いてみたら尺物だそうだ。
「おめでとう! 玉ちゃん!」

しかし、どうにもアタリが少ない・・・。
だが、来れば結構型はいい。

そして、またしても斉田さんに尺イワナがきた!
今シーズンは絶好調の斉田さん。

私は8寸、7寸を釣りあげる。もう1尾くらい尺をと思ってガンガン遡行していくが、
滝が行く手を阻んだ。
「あ〜、こりゃ巻くの面倒そうだね」
「まだ時間あるけど、アタリもイマイチだし、もういっか〜」
ということで、早めの昼飯を食べて戻ることにした。

昨日釣っていない玉ちゃんを先頭に竿を出す。
今日は玉ちゃんに尺を釣ってもらいたい!

またしても斉田さんに尺イワナが!

























 遡行していくと次々と滝が現れた。
























いいかげん巻くのも面倒になり、 
これ以上進むのはやめた3人。 
ちょっと早いが昼飯だ。 

清らかな澄んだ流れ。

たいした距離も釣り上がってないので、すぐにテン場。
「今から飲んだら酒が無くなるぞ」
という飲兵衛2人。
「じゃあ昨日よりも下流から釣り上がろうか」
とまた下流に向かったが、今日は全然釣れず。
昨日見かけた大物も隠れて出て来そうもなかった。
まあ、ちょっと時間つぶしもできたし、テン場でのんびりするか。

「ちょっと行ってきます」とまだ釣り足りないのか、玉ちゃんが一人で上流へ。
今日釣っていないテン場前から私が尺を出したところまでを探りに出て行った。

夏の渓は清々しい風が吹き抜け、テン場でまったり過ごすのにちょうどいい。
斉田さんといろいろな話をしながらのんびりしていたが、玉ちゃんがなかなか帰ってこない。
「帰ってこないってことは釣れてないのかな」
「釣れすぎて帰れないとか」
「それは無いでしょう」
などと好き勝手なことを言い合う。

しばらくするとニコニコ顔の玉ちゃんが帰還する。
「どうでした」
「釣れました。7寸、8寸のが5尾くらい」
「おお、凄いじゃない!」
「今日の竿頭だね」
「あー、そこじゃない、あっちの筋だよ。なんていううるさい外野がいないと釣れるんだね(笑)」

一人でゆっくりマイペースが玉ちゃんには合ってるみたいだ。

梅雨空から逃れて山梨に来たのは大正解だった。
雨が少しだけパラついた程度で、素晴らしい釣りができた。
さ、今日も盛大に焚火して、夜を楽しもう。
ぐっすり寝てるから遅くまで騒げるぞ。
渓には遅くまで焚火の炎がゆらめき、男たちの声がこだましていた。

下流部に竿を出す玉ちゃん。

今夜の焚火も盛大だ!
これぞ男のロマン!

楽しい時間はあっという間。2泊もすぐに終わってしまう。
テン場での記念撮影。
左から玉ちゃん、斉田さん、私(高野)

帰りの林道歩きは暑かった〜。
頭上には夏空が広がっていた。
これはもう梅雨明けだな。

思ったとおり、帰ってからしばらくして関東地方に梅雨明け宣言が出された。
暑い夏の始まりだ!


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