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  新潟県 胎内川 楢の木沢 堂沢
  2012/08/25-26



  平澤(瀧友会)
  斉田、高野(渓道楽)





Text&Photo: 高野

新潟県の飯豊連峰を流れる胎内川。
不思議な名前のこの川には、今から12年前の2000年に行っている。
あのときは本流を遡行して団子河原の手前まで行ったのだ。
ヘロヘロになりながらも思い出に残る釣り旅だった。
そして今回はそのときには釣らなかった支流の楢の木沢への旅だ。

楢の木へのアプローチだが、奥胎内ダムの工事によって本流左岸にある杣道は使えなくなったらしい。
となると有名な「アゲマイノカッチ」を越えていくルートしかない。
アゲマイノカッチは胎内へのアプローチに多くの人が使っている。
登りも下りもキツイらしいが、ちゃんとした踏み跡も付いているのだろう。
それにしてもアゲマイノカッチとは、これまた不思議な呼び名だ。ただの小さなピークでしかないのだが、
なぜこのような名前になったのだろうか。
ちょっと調べてみたが由来は分からなかった。

さて、奥胎内ヒュッテには夜中に着いた。関越道から日本海側へと高速道路が延びたので、行くのが本当に楽になったものだ。
車内で軽く乾杯して仮眠する。


今回入る楢の木沢は堂沢と鴨沢の二つの沢に分かれている。今回はその二股近くにテンバり、堂沢を釣ってみる計画だった。
堂沢にテンバるなら667mのアゲマイノカッチまで登って、通常ルートの向こう側へは下りずに稜線を辿り、西にある701mのピークまで行って二股へと下降するルートのほうが楽そうだ。
ガイド本にもそういうルートがあると書かれていた。おそらく目印や踏み跡もついているだろうから、沢を遡行していくよりも楽だろうと思ったのだ。

朝飯を食べて重いザックを背負った我々は、奥胎内ヒュッテの下流で胎内本流を渡り、対岸の登り口からアゲマイノカッチへの踏み跡に入る。
まずは朝イチでの胎内本流の渡渉だ。本流は結構な水量があって斉田さんが様子見に入ってみる。
「うわっ、深いよ! 足着かないよ〜」といきなり泳いでいる。
どうやら入ったところが悪かったようだ。
なので、もうちょっと上流の浅そうな所を狙って腹まで浸かって渡渉した。

アゲマイノカッチまでは1時間半〜2時間もあれば着くだろう。その先の稜線歩きと楢の木への下降を含めて4時間程度と見込んでいた。
実際、アゲマイノカッチまでは急登もあったが1時間半程度で着くことができた。
「キツイって聞いてたけど、意外とたいしたことないね」
「こっちより楢の木からの登りの方がキツそうだよね」
なんていう会話をしながら頂上で大休止する3人。
ここからは稜線を辿って701mのピークを目指す。

「う〜ん? なんか道が無いなぁ・・・」
「けっこうメジャーなルートなんじゃないの? 変だね」
といいながらも方角は分かっているのでヤブツバキやシャクナゲなどの密集する尾根を進む。
実際、まったく踏み跡すらない。それでもこのときはまだまだ余裕で
「たいした距離でもないし、1時間くらい歩けば着くでしょ」
「そうだな」
などと言いながらヤブをかき分け歩いた。

しかし行けども行けどもそれらしきピークが無い。
「おかしいな、普通下降点に目印くらいあるよね」
「と思うけどなぁ」
「通り過ぎてないよね」
だんだんと不安になる3人。
それに行く手を阻む猛烈なヤブにいいかげん嫌気がさしていた。
いくつかのピークを越えると、それらしき場所に出た。どうやらここが701mのピークらしい。高度計も大体そのくらいを指している。
ここまではアゲマイノカッチから1時間と少し。奥胎内ヒュッテからは3時間半くらい掛かっていた。

さて、下降する踏み跡を一生懸命に探すが、全く見当たらない。
それらしき目印すら何もなかった。
「無いね」
「まあ、この辺降りられそうだから、行ってみようか」
「だな、いつもそうだからな」
と適当な支尾根を下りはじめるもすぐに行き詰る。
それではとルンゼっぽいところを下ることにした。
でもこれが結構急なのだ。
幸いピンソールを付けているから、それがガッチリと斜面を捉えて不安は無い。
ブナの若木を2,3本まとめて掴んで、ヒーヒー言いながら下降する。
「まだ見えない?」
「まだ音もしないよ」
「もう水が無いんだけどさ〜」
そう、4時間程度で着くだろうと思った我々は、500mlのペットボトル1本しか水を持ってきていなかった。
この暑さでガブガブ飲んでしまい、そろそろ水切れしそうなのだ。
風が通らない斜面はとっても蒸し暑い。体から水分がどんどん失われていき、熱中症になりそうだった。

フラフラになりながら下降を続けていくと、ようやく沢の音が聞こえてきた。
楢の木沢に降り立ったときはクタクタで、沢の水をガブガブ飲んで水浴びをして、ようやく生き返った気分になれた。

「ところでここはいったいどこかな」
「鴨沢に降りたかな」
「水量少ない気がするから、二股の上に降りちゃったんじゃない」
「じゃあ、二股まで降りるか」
と3人は重いザックを担いで下り始めたのだが、それは間違いだった。
実際には二股よりも下流に出てしまっていたのだ。
気付いた3人は来た道を引き返し、12時過ぎにようやく二股のすぐ上、堂沢右岸にあるテン場に着くことができた。
時間にして6時間・・・。予想よりもずいぶんと掛かったものだ。

アゲマイノカッチへの途中で休憩。
このときはまだまだ元気だった。


アゲマイノカッチまでは踏み跡はしっかりしていて、迷うことは無いし、それほどキツイとも思わなかった。

アゲマイノカッチ(667m)に到着。
このまま向こう側に下れば楢の木沢の下流部に出ることができる。
目印の赤テープも風に揺れていた。


アゲマイノカッチから、胎内第一ダムが見えた。
ここから先は稜線を辿って、701mのピークまで行くのだ。

風も通らない尾根の藪をかき分けて進む。
まさかこんなことになるとは思ってもいなかった3人。























 何度かの小ピークに
 「今度こそ701だ!」という期待。
 しかし、それも見事に裏切られる。
 藪漕ぎで体力が消耗していく。
























おそらくここが701mのピークだろうと思われるところから、楢の木沢に向かって下り始めた。
予想では何かしら目印があるだろうと思っていたのだが、何も無かった・・・。
踏み跡も見つからなかったので、少しでも下りやすいルンゼをおりる。
しかし、途中からは急になったので、森の中へ・・・。

それにしても楢の木までどのくらい掛かるのだろうか。
降りても降りても沢の音が聞こえてこない。
まずいことに水切れになってしまった。喉がカラカラになって座り込む。


ピークから下ること2時間!
ようやく楢の木沢が見えた!


疲れ果ててヘタり込む3人。
さて、ここは鴨沢と堂沢の二股よりも上流なのか、下流なのか・・・。


テン場を設営して一休みして、ようやく釣りに行こうという気力がわいてきた3人。
そそくさと支度をして身軽になって堂沢を釣り上がった。
堂沢も上流に行くと険しくなるようだが、二股より上しばらくはおだやかな渓相が続く区間だ。高巻きとかへつりとかドボンとか心配せずに、釣りに専念できた。
さて肝心の釣果はと言うと、入れ食いとまではいかないが、3人でポンポンと飽きがこないくらいに釣れてくれる。
しかも型も8寸がアベレージでたまに9寸が混じってくるという、すばらしい状況。
数が多いので大型はいないのか、尺こそ出なかったが苦労して来たかいがあったというものだ。

それにしても歩き6時間で釣りをしたのは2時間にも満たない時間(笑)
果たして本当に苦労にみあった釣果なの?と問われると、微妙なところはある。
しかし、釣果だけを求めて山釣りをしているわけではない。釣りして焚火して宴会して楽しみはたくさんある。
2時間釣って満足した3人は渓を下り、テン場にもどって薪集め。一晩充分に燃やせる量を集めて、まったりとすごした。
やがて辺りは暗くなり、空には満点の星が輝きだす。焚火が赤々と燃え楽しい時間が過ぎて行った。

堂沢右岸のテン場
あまり広くは無いがまあ快適
ただデポ品があるのがいただけない。持ってきたら責任もって下ろすように!

一休みして回復したので釣りに出る。
足跡があるのでしばらく歩いてから竿を出した。

























 やはりファーストヒットは斉田さん。
 9寸くらいある良型だ!

8月も終わりだというのに雪渓があったのに驚いた。

近づいてみるとかなり大きい。
高さは3m近い。


冷気が噴き出している・・・。
もしかしたら近くに山菜があるかと探したが、残念ながら何も無かった。



























 まるでスプーンですくったようだ。

私にも8寸が来た!

























また斉田さん    

美しい源流イワナ

平澤さんも頑張って釣る

夏も終わるというのに、美しい紫陽花が咲いていた。

次々に釣れるイワナ。
こいつも良い型だ!




























雄大な飯豊の山々をバックに
竿を出すのは爽快だ




ポイントごとに釣れる、釣れる!


























 エサは全員ブドウ虫

鴨沢との二股からしばらくは、ずっとこんな感じの渓相だった。




山釣り、楽しい〜
平澤さ〜ん、そろそろ戻ろうよ〜
テン場に戻って夜が来た。
さあて、宴会と行きますか。
ナスの肉味噌炒め


何本か食べちゃったけど、ナスの焚火ぶっこみ焼き〜
ワイルドだろ〜?

おつまみ定番の枝豆

野菜もしっかり食べてます。
海藻サラダ。


牛のステーキ!
もう腹いっぱい〜!



























 今夜も赤々と焚火が燃える。

昨日の疲れからか、朝はなかなか起きられなかった。ふだん源流では5時過ぎには目が覚めてしまい、焚火をおこしているのだが、今日は7時くらいまで寝ていた。
斉田さんと2人が寝坊してる間に、平澤さんが一人焚火をおこしてくれていた。

「テン場前に竿を出したけど、釣れませんでした」
自分が寝てる間に、平澤さんはしっかり釣りしてたようだ。

さて、今日は帰るだけ。朝の定番、お茶漬けで腹ごしらえして、9時前に片づけを終えて出発した。
昨日の苦労から701mのピークまで登り返すのはまっぴらごめんと、今日は素直に楢の木沢を下ってアゲマイノカッチへ直登することにした。

楢の木沢は下流部にはヤバイ滝など無いため、水線通しに下ることができる。
背の立たない深い淵もあるが、久々のラッコ泳ぎで泳ぎ下った。
しかし、なんでもない場所で斉田さんがスリップダウン。
「痛てぇ〜。ヤバイ、膝がボキッて鳴った・・・」
「え!? 大丈夫? 歩ける?」
「あ〜、なんとか大丈夫みたい。曲げられるから折れてはないみたい」
良かった〜。危ない危ない。こんなところで怪我したらアウトである。
しばらく休んでゆっくりと歩きだす。

テン場からアゲマイノカッチ取りつき口までは、3時間近く掛かった。
「思ったよりも遠かったな。」
まあここからはアゲマイノカッチまでは道がついているだろうから、キツイけどすぐだろうと思ったのだが・・・。

「テープあるから、ここからだね」
「水はペット1本で足りるよなぁ」
「うん、結構踏まれてるだろうし、登っちゃえばすぐだからいいでしょ」
なんて会話をしながら、ペットボトル1本を満タンにして、登り始める。
昼飯も降りてから食べるつもりだったので、パンをかじって出発した。

「あれ? こっちか?」
「いや、違うんじゃない?」
「どこだ、道ないよ」
「・・・」
またしても騙された(笑)
有名ルートだからしっかり踏まれて、道がついていると思ったのだが、全く見当たらない。
胎内ヒュッテ側からは踏まれていたが、楢の木側には何も無いのだ。
みんなどこ歩いてるんだ。

かなりの急斜面を木々に掴まりながら必死に登る。
休むとすぐにアブがまとわりついてきて、うっとうしい!!
油断して何箇所も噛まれてしまった。
メジロではなくて目が緑の奴である。渓からずっとついてきているのだ。

もうルートは見失っているので、大体の方角を目指して登る。
帰りもかよ! 2日連続でプチ遭難かよ(>_<)
そして、またまた水切れだ。なんてこった。

どうにかアゲマイノカッチに着いたのは14時だった。登り始めから2時間、テン場からは5時間である。
もう水も無く喉はカラカラ。おまけに腹もペコペコでフラフラ状態。
それでもここからは下りだけ。枝を杖にしてゆっくりと降りた。

眼下に奥胎内ヒュッテの赤い屋根が見えたとき、心からホッとした3人だった。

結局、往路も復路も6時間掛かっている。誤算だったのは楢の木側のルートが不明瞭、というよりも全然不明だったこと。テープ等も取りつき点にしか見当たらず、急斜面を木々に掴まりながら登り降りしたのがキツかった。
ガイド本やネットの情報にもあまりそういったことが書いていなかったので、甘く見たのがいけなかった。
久しぶりにキツイ釣行となったが、それでもイワナもけっこう釣れて楽しい旅だったと思う。
また行くかと聞かれれば「う〜ん」と考えてしまうけどね。

出発前のテン場にて。
トゥース! オードリーの春日みたいに何で胸張ってるんだ、俺・・・。
どんどん下ろう、楢の木沢!

こんな感じの淵が連続する。
楢の木の岩は良く滑る・・・。
油断するとヤバい。


暑いから水の中が気持ちいい〜。
ラッコ泳ぎする平澤さん。
泳ぎはここ一か所だけだった。
流れが無いと進まないんだよね〜。



だんだんゴルジュっぽくなってきた。

いいいねぇ源流って感じだねぇ〜
弱ったオニヤンマをパチリ!
アゲマイノカッチへの取りつき点。
ここには赤テープが下がっていたのだが・・・。
どうやらこのルンゼを登るのがいいらしい。
我々は左の尾根に入ってしまって苦戦した。

登り始めから踏み跡すらないよ。何コレ!?
アゲマイノカッチでへたり込む我々。
もう水がない・・・。喉乾いた、水〜。

やった、奥胎内ヒュッテが見えた!!
コーラ飲みてぇ〜。風呂入りてぇ〜。飯食いてぇ〜。

胎内本流に出た!
とたんにメジロが群がってきた(>_<)
ホントに腹が立つ奴らだ!
今日は思い切り減水していた。帰りは膝までで楽勝。


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