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  関東 某沢
  2015/05/5



  森、高野





Text&Photo   : 高野

渓流釣りが好きな者にとっては、GWは待ち遠しい休みだ。
この時期になれば雪解けも進み、今まで入れなかった源流にも竿を出せる時期だし、
長期のまとまった休みを取れるから泊まりで行くこともできる。
自分も毎年4月くらいから計画を立てて、どこかに行くことを楽しみにしている。
今年も渓道楽の仲間と2泊で信濃又河内に行く予定を立てていた。
が! 直前に2日の土曜日が仕事になってしまい、キャンセルせざるをえなくなった。
仕事柄よくあるんだけど、毎度毎度腹が立つ〜!

予定も無くなってどうしよっかなぁ〜と考えていたら、会員の森ちゃんが日帰りプランを提案してきた。
そこは前から調査してみたいと思ってた渓だ。
二つ返事でOKして、5日に決行することとなった。

GW真っ只中の5月4日。森ちゃんに拾ってもらって、林道の車止めを目指す。
早めに着いてゆっくりしたいので、前日夕方に出発したのだ。
延々と続く上り車線の渋滞を横目に、高速道路を順調に走る。
車止めには予定通りに着くはずだった。しかし! 予定外のハプニングが待っていた。
なんと林道が車止めの数キロ手前で通行止め・・・。
ガッチリとゲートが閉まって、我々を通せんぼしている。
「あちゃー、何これ、聞いてないよ〜。」
「うわ、雪で通行止めか?」
「そんなに雪は無いと思うんだけど。開放する時期は、毎年決まってるのかもね。」
「しゃーない。ちょっと予定より時間かかるけど、まあいっか。」
「だね。」
他に行くあてもない2人は、あきらめて宴会して早めに就寝。

辺りが明るくなってきて、目が覚めた。
天気予報では雨が降ると言っていたのだが、どうやら降らなかった様子。
これなら家を昼に出て、渓泊まりすればよかったなぁと残念がる2人。
森ちゃんは去年の6月くらいから渓泊まりしてないから、焚火がしたかったらしい。

軽く朝飯を腹に入れて日帰りの装備を背負って、林道ゲートを越して出発!
途中、工事の重機が何台か置いてあった。どうやら道が崩れて復旧工事をしているらしい。
そのせいで通行止めだったようだ。
ちょっと余計なアルバイトをさせられたが、無事に渓に到着。
まずは奥の支流から釣ってみるとしよう。

「あれ、なんか岩が赤茶けてない?」
「ほんとだ。悪沢かぁ?」
流れに浸かっている石が妙に赤茶けている。
これはなんか水が悪そうな雰囲気だ。
もしかしたら魚いないかも。

今回、森ちゃんはテンカラのみ。自分はテンカラと堰堤狙いのルアーを持ってきた。
まずは森ちゃんがテンカラで釣ってみる。
だが、何度振り込んでも反応がない。
これが魚の活性が低くて毛鉤に出ないのか、それともそもそも魚がいない沢なのか、
いまいち判断がつかない。
実績があるエサ釣りができれば判断がつくのだが、あいにく今回はエサ釣りの用意はしていない。

「魚、いないのかな?」
「渓相は悪くないんだけど、この岩の色がちょっと怪しいな。」
「魚、走らないよな。」

しばらく釣り上がったが、イワナの気配も無いのでここはや〜めた。
再び崩れた林道に上がって、別の支流を目指す。

























渓へと向かう林道は、ご覧のあり様。
このまま永遠に崩れ続けるのだろうか。

























いたるところに熊の爪痕が・・・
この渓は熊のテリトリーだった。

5月になって、山はようやく芽吹きの季節を迎えた。
山の斜面から、かなりの量の水がわき出ている。
しかし、そこには無気味な感じの堆積物とコケが。

嫌な予感がしたが、とりあえず竿を出してみる。

荒れてはいるが、まあまあの渓相。


























うーん、やっぱり釣れないか。

























ダメだ!
次行こ、次!

支流の二俣に到着してすぐ上にある堰堤に登る。
上からのぞくとイワナが泳いでいるのがみえる。
「お、いるいる。」
「こっちの支流は魚いるね。釣れるかどうかわからんけど(笑)」

下のほうは荒れてて渓相もイマイチなので、少し歩いてから竿を出す。
まずは2人してテンカラを振ってみる。

頭上の木を気にしながらやるのだが、それでもひっかけてしまう。
こういうところでも、瀬畑さんなら長いラインでも余裕なのだろうなあ。
なんとか上手く振りこめてポイントに入っても反応なし。
堰堤上から落とすという釣り方でも、魚に見切られてる感じだ。
でもたまにライズしているのだから、食い気が無いわけじゃなさそうだった。

森ちゃんが何度か挑戦するも、アタリも出ない。

こうなったらルアーでやってみるか。

堰堤上はプールになっていて、魚が何尾も泳いでいた。
上流側に回り込んで、姿勢を低くしてアプローチ。
ルアーでやってみるかとは言ったものの、実はルアーは初心者なのだ。
今まで1尾の魚も掛けたことない・・・。
はたして釣れるのか。

まずは銀色のスプーンを付けて振りこむ。
テレビの釣り番組で「シュッ!」とカッコよくルアーを投げているが、
自分のはピヨーン、ポチャんって感じ。
カッコわりー(笑)
森ちゃんに投げ方をレクチャーしてもらい、何度かやっていると飛ぶようになってきた。

リールをくるくると巻いていると、水中をルアーが泳いでいる。
それを良型のイワナが追ってきた。
「お〜、来てる来てる! よし、食え!」
「あ〜、ダメかぁ。」
追っては来るものの、岸近くまで来てUターンしてしまう。
上手い人ならアクションを加えて食わせるとかできるんだろうな。

結局、その堰堤では釣れず。
あきらめて釣り上がる。
支流はそれほど大きくないので、自分の腕では堰堤以外はルアーを投げ込めそうもない。
堰堤間は森ちゃんのテンカラにまかして、次の堰堤を目指した。

やがてまた堰堤が立ちふさがる。
ここは源流とは言っても堰堤が何基も作られてしまっていて、雰囲気は良くない。
こんな山奥にこんな大きな砂防堰堤が必要とは、とても思えないのだが。
人目につかない所で、やりたい放題しているような気がするのは自分だけか。

さて、堰堤下では出なかったので高巻いて上流に出る。
ここも同じようにプールになっているので、静かにアプローチ。
森ちゃんのアドバイスで、今度は黒金のスピナーにチェンジ。
堰堤の奥に放り投げる。
リールを巻くと今度もイワナが2尾追ってきた。
しかし、数メートルの所まで来てUターン。
「なんだ、またかよ。」と愚痴った瞬間、ググっと手ごたえあり。
「お、来たよ来た!」
と初心者丸出しの大喜び。
この竿を買ったのは、いったい何年前だったか。5年、いやいや10年は経ってるぞ。
ま、ほとんど使ってなかったからと、自分に言い訳。

さて、釣れたイワナをパシャパシャと撮影。
「これ、意外と大きいんじゃん? もしかして尺あるんとちゃう?」
「どれ〜。」
とメジャーを当ててみると、なんと29cm・・・。
残念、尺無かった。
ルアーの初釣果が尺だったら、ネタになるのに(笑)
それでも、とっても嬉しいのだ。

1尾釣れたから、またテンカラで堰堤間を釣る。
出して仕舞って竿変えて。なんか急がしいな。
上流に行くにしたがって、さらに頭上の木が増えてきた。
テンカララインを短くして、なんとか振っていくがアタリがない。
まだ毛鉤は早いのかなと、自分の腕の無さを棚に上げる。

数十メートルも行くと、またもや堰堤。
今度のは堰堤下もポイントあり。
またルアーを出して投げ込んだ。
ゆっくりと引いて探りを入れる。
今度は波立っていて魚は見えない。
ダメかなぁとルアーを回収する寸前、グンと引かれてヒット!
「よっしゃ、来た〜!」
今度のは、腹の黄色い朱点も鮮やかな居着きのイワナだった。
サイズはさっきのより小さいが、それでも8寸くらいはある。
じゅうぶん嬉しい。
「次に来る時は尺2寸くらいになってろよ。」
とプールにリリースした。

さて、ここまで釣り上がってきたが、この上に行ってもテンカラを振れそうもない。
時間も時間だし、帰りも車まで余分なアルバイトが待っている。
ここらで引き返すとしようか。
今日はテンカラは不発だったけど、初めてルアーで釣れたから気分もいいぞ。
「源流のスレてないイワナだったら、初心者ルアーでも釣れるもんだなぁ。
よし、次はもっとデカい滝壺で投げてみるか。」
などと、すっかり味をしめた私であった。

すがすがしい5月の空。
薫風が駆け抜けていった。

よし、来た!
ルアーで釣った初めての1尾に嬉しさがこみ上げる。
おしくも尺ならず。

森ちゃんはテンカラで釣るも、全くアタリがない。

魚はいそうな渓相だよなぁ。
毛鉤じゃまだ早いのだろうか。

2尾目のイワナは、綺麗な朱点の居着きイワナだった。
























流れは細くなり、木が被ってきた。
ここらで引き返すとしようか。

渓泊まりできなかったのが残念。
今度はゆっくり泊まりできて、焚火しよう。

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