HOMEBACK
  関東 楽園沢
  2015/08/14〜15



  高橋、斉田、高野





Text & Photo  : 高野

源流釣りのシーズン中、今年は3日以上の連休が4回ある。
5月のゴールデンウィーク、7月の海の日絡みの3連休、8月のお盆休み、9月のシルバーウィーク。
仕事にもよるが、多くの人が休みを取って釣りに行くのを楽しみに計画を立てているだろう。
自分も普通の会社員なのだが、今年は(今年も?)連休にしかできない仕事があってGWも海の日も休めなかった・・・。
安月給で休みまでこき使われて、ホント嫌になるが仕方がない。
でも今の時代、リストラされずに働けるだけでもありがたいのである。

しかし、海の日の釣りはホントに行きたかった。
というのも、なんと38cmが2本、36cm、34cmと大物爆釣だったのだから、悔やんでも悔やみきれない。
長年渓流釣りをやってきて思うのだが、いや、釣りに限らず人生の多くの場面においてかな、
何に関しても1番を取ることができる運というか、そういうのがあると思う。
あるいはそういう星の下に生まれたというのが正しいのか。
腕とか努力とか以前に、そんなのがあるんじゃないかと。
残念ながら自分は2番くらいが定位置のようだと、半世紀を生きてきて気がついた(笑)
38cm釣ってみたいなぁ。
大物連発の話は概要を聞いただけなのだが、そっちのレポートは誰か書いてくれるんじゃないかなぁ。

それはともかく、7月初めにフランスからのお客さんと釣りに行ったきりだったので、8月はぜひ行きたいと斉田さんに話を持ちかけた。

「じゃあ、例のパラダイスに行きますか。」と斉田さん。
「お、あそこですね。前回できなかった滝上にも行っちゃいますか!」
「そうしよう!」
ということで、イワナの楽園への釣行が決定した。
そこは以前に行って爆釣した渓だ。
しかし、このところまとまった雨が降っていない。
行ってみたら水が少なくて釣れなかった・・・なんてことにならないか、ちょっと心配。

メンバーは板長高橋さんを加えた3名。
板長の美味い飯も楽しみだ。

準備万端で迎えた出発当日、お盆の真っただ中ではあったが、深夜の高速はそれほど混んではいなかった。
車止めに着いてエンジンを切ると静寂に包まれる。
軽く宴会して仮眠したが、イマイチ眠れないまま朝になってしまった。

重い瞼を開いて、林道に店を広げて準備する。
忘れ物がないか確認して崩れた林道を歩きだした。

辺りは霧に包まれて幻想的な雰囲気。
でも、山奥だからちょっと怖いかも・・・。
寝不足だからか林道歩きでも疲労がたまる。
この先山に入ったらキツそうだな・・・などと考えながら行くと、林道終点。
ここからは急登が待っている。
高橋さんと斉田さんを何度も待たせながら登る。
心臓がバクバクと爆発しそうなくらい脈打っていた。

「もう少しで平らになるよ」
先を行く斉田さんが教えてくれる。
しばらく頑張ると、ようやく登りが終わってトラバース気味に道が続いていた。
しかし、しばらく行くと踏み跡が消えた。
「そっちに道は無いよね?」
先頭の斉田さんが後ろに声を掛けてきた。
「うん、無さそうだな。」
と答える。
どうやら見失ったようだ。
どこかで分岐していたのだろうか。そんなところもなかったと思うのだが。
「登りすぎちゃったみたいだね。あの下に見える岩の下あたりが正規ルートっぽいな。」
と斉田さんが言う。
確かに前に来たときより、登りが長かった気がする。

戻るのも面倒なので、急斜面を木を頼りに下降した。
GPSと地図で確認したところ、このまま降りられれば予定通りの下降点に出られるはず。
途中、スッパリ切れた岩壁に阻まれながらも、なんとか渓へと降り立った。
ここまで3時間半。まあ予定とさして違わないタイムだった。 

霧の林道を行く
急斜面を登る
この辺りで道を間違えたようだ



























  かろうじて踏み跡っぽい道をたどる
  これはすでに獣道なのか

崖の上に出てしまい、行き詰まる
この後、お約束の強引に下降


ザックを下ろして一休みしたついでに、竿を取り出す。
前回は降りたところから入れ食いだったのだ。
期待に胸をふくらませて第一投。
いい筋に仕掛けが入った。
しかし・・、アタリ無しだ。
何度か流すがダメ。
「おかしいよ、釣れないね。」
「お盆だから、釣り人が入ったかなぁ。」
首をかしげる3人。

やっぱりイワナ釣りは難しい。
ここでいう難しさは技術うんぬんじゃなく、イワナの気持ち?を読むこと。
前回はいっぱい釣れたのに、期待してまた行くと全く釣れないことが何度もあった。
いったい何が原因なのだろうか。水量なのか、水温なのか。人間にはわからない何か別の原因なのか。
渓の翁とまで言われる瀬畑さんですら、イワナ釣りは難しいと言っていた。
それほどまでにイワナ釣りは奥が深い。
しかし、釣れる時はホントに簡単に釣れる。気まぐれに翻弄されて何度もガッカリさせられたが、それでも魅力があって辞められないのがイワナ釣りだ。

それにしてもホントにイワナがいなくなってしまったのだろうか?
右岸にあるテン場にいつものタープを設営した我々は、さっそく上流へと向かった。
渓相は素晴らしく、初心者でも見落とすことは無いと思われるポイントでも、釣れなかった。
これはやっちまったかと誰もが思い始めたところで、ようやく1尾目が出た!
水面を割って飛び出してきたのは7寸ほどのイワナ。
ちょっと小さいけど、とりあえず釣れてホっとした。

やがて前回入れ食いだった滝下の淵に着いた。
ここは2人で20尾以上釣ったところだ。
それもほとんどが8寸以上で、尺も出た。
ところが今回は全然釣れない。
やっぱり変だ。
夏の暑い時期だからか。

いかにもなポイント
前回はこの辺りでウジャウジャだった

とりあえずイワナはいた

ザックを下ろして身軽になって釣り上がる
こんな素晴らしいポイント続きなのに、魚影は薄い
こんなはずじゃあ・・・

竿を出す斉田さん
絶対いると思うんだけどなぁ

もう滝を越えて、その先のゴルジュ帯に進むしかなさそうだった。
以前に来た時も滝上の偵察はしていたが、その時はザイル無しだと危険だと判断して、次回に持ち越したのだ。
そのとき思ったのは、ザイルを使って滝壺に降りて泳いで突破し、先にある滝を登ってゴルジュに入るつもりだった。
今回、他に手は無いかと滝を巻いて偵察してみたら、なんとか降りられそうな場所を見つけた。
そこにいたる踏み跡がついていたのだ。あきらかに釣り人が入っていた。

「ありゃ、やっぱ入ってるね。」
「この先もダメかなぁ。」

ちょっとヤバそうな所を慎重に下り、なんとか谷底に降り立つことができた。
渓相は素晴らしい。ゴルジュとはいってもそれほど険しくなく河原もある。
さて、イワナはいるんかいなと、斉田さんと高橋さんが竿を出す。
すると、すぐにアタリが来た。
でも、10cmくらいのチビイワナ。
釣れるようにはなったけど、イマイチ型が良くない。

しかし、だんだんと型が良くなってきた。
斉田さん、高橋さんと同じ淵でダブルヒットも出た。
自分にもようやく8寸ほどの良型が来た。

斉田さんと高橋さんはテンポよくポンポン釣っている。
だが、自分はイマイチでだんだんと焦りが・・・。

やがて目の前に2段20mの滝が現れた。
幸い右側を直登できそうだったので、斉田さんを先頭に突破。
するとどうだろう、今まで両岸が切り立った山岳渓流だったのが、河岸段丘の広がる穏やかな流れに変わった。
豊かなブナの森から草原がつながり、そこはまるで桃源郷のようなおもむきとなった。
ゆっくりと歩みを進めると、何尾ものイワナが足元から走る。
かなり浅いところについているようだ。

釣れなくて焦りの出ている私に、ここで2人がポイントを譲ってくれた。
足元から走るのを見ていたので、駆け上がりについているのは間違いない。
思い切り姿勢を低くしてゆっくりと左岸から小滝の下の釜に近づく。
すると、手前の花崗岩の真っ白い砂地が目に入った。
そこにユラユラと流れにただようイワナの影。
水深は30cmもない。イワナの背中の模様までハッキリ見えた。
私は気付かれないよう静かに竿を伸ばし、仕掛けをやつの上流に投げ込んだ。
エサに気付いたイワナは、スルスルっと泳ぎ一発で食いついた。
「来た!」
一瞬待ってあわせると、今までと違うちょっと重い手ごたえ。
釣れたイワナにすぐにメジャーを当てた。
「やった、尺イワナ!」
ジャスト30cmの精悍なオスイワナだった。

素晴らしいポイントを譲ってくれた2人に感謝!

今回の釣行では尺物は初めてだ。
前回は確か2〜3尾釣れたと思う。
ちょっと苦戦していたので、ホント嬉しかった。

その後も何尾か釣って、名残惜しくもテン場へと引き返した。
帰り道は1時間程度だったので、釣った距離は大したことはなかったのだろう。
入渓した辺りは全然釣れずどうなるかと思ったが、終わってみればまずまずの釣果でホっとした。

ゴルジュを進むとだんだんと釣れ出した
斉田さんの釣った8寸

キタよ!

高橋さんと斉田さん、ダブルヒット


























これも良型だ

私にも7寸ほどの綺麗なイワナが
やっとまともな型が釣れた


























2段20mの滝を登る


























滝を越える斉田さん


























今度は高橋さんに9寸


























この滝を越えたところに桃源郷が待っていた




























毛鉤に替えても釣れる


























また斉田さん
上流部は型がいい!



























ついに尺イワナ!!

まだまだ素晴らしい渓相が続いていた

お花畑もあった
これはハンゴンソウかな

素晴らしい夏空


時間だ
名残惜しいがテン場に戻ろう

テン場に戻って薪を集めて火をつける。
最初はちょっと燃えにくかったが、暗くなるころには盛大な焚火となった。
晩御飯は豚しゃぶだ。さすが板長、いい味を出してくれる。
そして締めに豚の出汁が効いたラーメン。
もう腹いっぱいで何も食べられない〜。

焚火を囲んで話は尽きない。
今夜はペルセウス座流星群が見れるらしいのだが、残念ながら一つも流れなかった。
もう少し空が開けていたら見れたのかな。
だんだんと瞼が重くなって、シュラフに潜って就寝・・・。

夜中に何度か目が覚めたが、朝まで良く眠れた。
時計を見ると6時だ。
他の2人はまだ寝ている。
明るい日差しが降り注ぎ清々しい朝だ。やっぱり渓の朝は最高!
さて、普段なら最初に焚火をおこすのだが、なんとなく釣りをしてみた。
もちろん着替えるのは面倒なのでサンダル履き。
テン場の目の前は不発。ちょっと上流に移動。
するとまたイワナが泳いでるのが見えた。
「しめた! またいるじゃん。9寸くらいありそうだな。」
姿勢を低くゆっくりと近づく。サンダル履きなので水際ギリギリまでいって、イワナの上流に投げ込んだ。
すると泳いでるのより上流でアタリがあった。
暴れさせると他のが釣れなくなると思い、ゆっくりと下流に誘導してビシっと合わせた。
構わず抜いたがけっこうデカイよ、これ。
またまたメジャーで計測すると、なんと尺一寸。
昨日のを上回った。
最後にいいのが釣れたぞ。いけすを作って2人に自慢したのは言うまでもない(笑)

それにしても昨日釣れなかったのはなぜだったのだろうか。
う〜ん、やっぱりイワナ釣りは奥が深い。
この楽園がいつまでもこのままであることを願い渓を後にした。

盛大に焚火を燃やそう!

テン場上流で釣れた尺一寸

いけすで観察
広いテン場
すぐ前で焚火もできた

いつものメンバー
左から高橋さん、私、斉田さん
栃木県人だったら目の色が変わるチタケ
帰り道に群生していた

急斜面でお土産収穫

 HOMEBACK