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  北関東の沢
  2016/09/03〜04



  斉田、吉川、高野





Text & Photo   : 高野

2016年のシーズン、一人の青年が渓道楽に入会した。
吉川さんという、まだ20代の若手だ。
ここ数年で平均年齢のグッと下がった渓道楽だが、これでまた一段と若くなった。
彼を毎月恒例の飲み会に呼び人柄に接してみて、新しいメンバーとなってもらうことに誰も異存はなかった。

彼はまだ源流には行ったことがないとのことで、当然ザック等の装備も持っていない。
そこでまずは装備を揃えてもらい、秋口にでも新人歓迎釣行に連れてい行くこととした。

吉川さんはガタイも良く20代なので体力的にも問題はないと思うが、それでもいきなりハードな源流(他の会からすれば渓道楽のいう源流は全然ハードじゃないのだが)に連れて行くのは心配である。
そこでまずは歩き3時間までとし、危険な箇所が無い源流に絞った。そして当然、イワナが釣れなくては話にならない。
源流のイワナ釣りがしたくて来たのだから、「なんだよ全然釣れないじゃん。つまらないから辞めようかな。」
と思われても困る。もちろん吉川さんはそんな人じゃないのは話してみてわかっているが、連れて行く側としては楽しい思いをしてもらいたいのだ。
そういうときは困ったときの斉田頼み。また斉田さんの隠し沢へと案内することに決定した。

暑さも少し和らぎ、過ごしやすくなった金曜日の夜。いよいよ吉川さんの初釣行当日となった。
彼の車で快適な深夜ドライブを満喫した我々は、満天の星空に包まれた車止めへと到着した。
まずは、クーラーボックスで冷え冷えのビールで、乾杯!
コンビニで買ってきた乾きものを肴に、しばし宴会・・・。
数時間の仮眠後に、重たいザックを背負って出発した。

ここのアプローチは時間こそ短いものの、道が不明瞭でとても迷いやすい。
何度か来ているのだがいつも間違える。初めて来たときは迷わず行けたんだけどなぁ。
今回は登りすぎないように注意して、渓へとトラバースして下降する。
若干迷ったが、まあ概ね順調に到着した。

彼の眼には初源流がどう映るのだろうか。
素晴らしい思い出を持って帰ってもらいたい。

不明瞭な踏み跡を辿る。
ん? 道はどっちに行ってる?

清らかな流れを前に、ザックを下ろして一休み。
渓に出てしまえばテン場は近いのだが、そこまででも結構良いポイントがあるので釣りながら行く。

目の前は滝になっていて、すぐ下はプールだ。
ここには、いつも必ず良型が居ついている。
まずは斉田さんが試し釣り。
すると期待にたがわず一発でイワナが出た。大きさは7寸と小ぶりだったが、イワナは健在だった。

そこで次に吉川さんに竿を出してもらった。
吉川さんは里川での渓流釣りの経験はあるということなので、振込みは問題なくできている。
手前駆け上がりから釣るようにアドバイスして、カメラを構えた。
一発で来てくれたら素晴らしいんだけど・・・。
ウーン、さすがに難しいか。

そして再び斉田さん。左の流れに仕掛けを流す。
するとグンッと竿が絞られた!
「おっ、けっこうデカいよ、これ。」
斉田さんが叫ぶ。
なんと尺一寸の良型イワナだ。入渓点で尺一寸かよ!
まあこの渓なら出ても不思議じゃないけど。相変わらず斉田さんの釣りは安定している。
これを見て俄然張り切る吉川さん。
再び同じポイントに竿を出すと・・・
「き、来ました!」
今度は吉川さんの叫び声がこだまする。
直後、彼の手には9寸はあるイワナが握られていた。
やはりこの渓は素晴らしい!!

まずは吉川さんが第一投。

さすがにいきなりは釣れなかった。
斉田さんが投げ込むポイントを教える。

斉田さんがお手本を見せると・・・。
ほら、釣れた!
ってデカイよ、それ!!
いきなりの尺一寸。相変わらず安定の上手さ。


























吉川さんにも来たよ〜。
9寸はあるんじゃない?
満足そうな顔してるねぇ。

テン場までの好ポイントを探る。

我々3人は、はやる気持ちを抑えて釣り上がった。
何しろいきなり尺一寸を見てしまっているのだから、平常心ではいられない。
テン場は近いが、そこまでも釣れるのでザックを背負ったまま竿を出していく。

テン場に着くとすぐに荷を解き、手慣れた手順でタープを設営。
初めてで戸惑う吉川さんに指示しながら、テン場が完成した。

「よっしゃ、じゃあ行きますか!」
身軽になった3人は足取りも軽く上流へと向かう。
この先には斉田さんと2人で入れ食いになったポイントがあるのだ。
そこまで行く手前も、もちろん外せない。
そしてすぐに斉田さんが9寸。そして写真ばかりじゃ辛抱たまらん自分にも8寸!

次々に掛かるイワナにみんなテンションMAX!

もちろんイワナだけじゃなく、景色も素晴らしい。
黒部のような大迫力の絶壁でもなく、東北のようなおだやかな森でもないが、ここ北関東もなかなかどうして美しい眺めである。
今まで数多くの渓に行ってきたが、どこもそれぞれ甲乙つけがたい美しさがあるものだ。

そして、我々以上に初めての源流に感激しているのが吉川さん。
見たこともない澄んだ流れに身を浸し、嬉々として竿を振っている。
そんな彼に渓の女神が微笑まないわけがなかった。
彼の竿にも次々とイワナが掛かる。
そして例の入れ食いポイントに到着。
前ほどじゃなかったけど、やはり期待を裏切らない場所だった。
斉田さんが良型を上げた後、吉川さんにアドバイス。
「そこ、大岩の下に仕掛けを流し込んでみなよ。」
「え、そこですか?」と吉川さん。
斉田さんの言う大岩とは、ホントに目の前も目の前。
自分たちが立っている所から、2mもない位置のことなのだ。

いやぁ、いくら釣れるといったって、すぐ前に立ってガヤガヤやってるとこじゃ、いくらなんでも釣れるわけ・・・

「え〜! え〜! マジで?」

あっという間に吉川さんの竿先が引き込まれた。
え〜! ウソだろ???

大岩の下から引っ張り出されたイワナは、一目で大きいとわかるサイズだった。
興奮する吉川さんを落ち着かせ、メジャーを当てたら、なんと30cm!

おいおい、源流初めてで尺イワナかよ!
この男、持ってるのか!

今年の7月、何度も何度もあちこちの源流に通って、そしてようやく尺イワナを手にした宮ちゃん・・・
君は持ってないのかも(^^;
でも、翌日には尺2寸を釣ってるんだから、やはり持ってるよ。
私や斉田さんは尺イワナを釣るまでに何年かかったことやら・・・。

「おめでとう!」
オジサン2人に祝福された吉川さん。とっても嬉しそう。

今夜のお宿。

もちろん私も釣ります。
美しい流れが続く渓。


お、また来たね。


























斉田さんは毛鉤にチェンジ。
























そして、そして
吉川さんに、まさかの尺イワナ。
信じられないが背後の岩の下で出た。

























これは嬉しいよね。
初源流で尺イワナ!
おめでとう!!

いいイワナだ。

釣りはまだ始まったばかり。しかし、すでにもう2尾の尺イワナに8寸、9寸は数知れず。
そして釣り場はまだまだ続く。
入れ食いポイントを越えて滝を巻いて、3人は進んだ。
巻道から下のほうの流れを見ると、小さな落ち込みにユラユラ揺れる影。
イワナだ。
警戒心も無く丸見えの浅場で餌が流れてくるのを待っている。
「吉川さん、あそこ。あそこにイワナ見える?」
「あ、いますね。見えます。」
「下流から行って、あの上手に餌入れてごらんよ。」
吉川さんが、下流から忍び足で近づく。
そして、そっと上流に餌を落とした。
「よし、いい場所だ! あ、あれ? イワナ逃げちゃった・・・」
離れて見ていた私の目に、絶好の場所に餌が落ちたのが見えたのだが。
なぜかイワナはスーっと隠れてしまったのだ。
「おかしいなぁ。警戒心が無いんだから、絶対に食ってくると思ったんだけど。」
その後もイワナは見えるが、餌を入れると隠れてしまうのが何度もあった。
自分でも同じように上流に落としたのだが、ダメだった。
これだからイワナ釣りは難しい。見えるイワナは釣れないと言うが、前にここに来たときは全く同じ状況で尺イワナを釣ったことがある。
その時と同じだと思うのだが・・・。どうやら今日は浅いところにいるのは釣れないようだ。
だがもちろん、その後もイワナは釣れた。
不用意に近づいて渕尻からビュンビュン走られてしまうときもあった。
間違いなくここはイワナの楽園なのだ。
今回の釣果は全員ツ抜けという、夢のようなものであった。
初源流で尺イワナを釣ってツ抜けの釣果なんて、今まで見たこともない。
吉川さんには新人賞をあげたいくらいだ。

さて、釣りを堪能した3人は、踵を返してテン場へと戻った。
今回は刺身用に2尾だけキープさせてもらい、吉川さんにイワナの刺身を食べてもらう。
新鮮なイワナの刺身、美味かったでしょ?

そして夜はお約束の焚き火。満天の星空の下で盛大に燃やして、楽しんだ。
こんなことができるのも源流ならでは。
初めての源流釣行でこれだけ釣れれば、吉川さんもきっと病みつきになることだろう。
でも、こんなに釣れるのはここだけだし、めったにあることじゃないからね(笑)
釣れない時があっても腐らずに、自然の中で遊ぶことを楽しんでくれればと思う。

さあ、2017年もみんなで源流に行こう!

滝を巻いて上流に。
また釣れたよ。
次々と釣れてくる楽園。
ここは大切にしないといけない渓だ。


どんどん釣り上がる。
吉川さんは遡行能力、体力ともに問題なし。
期待の新人が入会してくれた。






源流最高〜!
焚き火も最高〜!
どんどん燃えろ!
今回のメンバー。
左から私、吉川さん、斉田さん。


初源流、満足できたようだね。
2017年も一緒に源流に行こう!


























美味しそうなタマゴタケ

イグチもあったよ。
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