対する僕はいつものフライロッドではなくテンカラ竿を持って来たのだが、フライと違って長尺の和竿は上空の枝を気にしながら投げなければならない。キャスティングの調子が出ないままあっちこっちに引っ掛けるうち、持って来た数個のニンフが全て無くなってしまった。残ったエルクヘアカディスと伝承様式の毛鉤で水面付近を叩くが、魚は僕の毛鉤には一向に目を向けてくれない。毛鉤釣りとは常に魚が持つ好奇心に比重が置かれる。好奇心の無い魚は毛鉤など見向きもしないのだ。
ついさっき氷で転んでしまったお尻をさすりながら、「フライロッドなら木に引っ掛けなかったのにナァ・・・」などと愚痴も出て来た。釣れず、転び、毛鉤も無い・・・悪循環に入ってしまった。
「これなら、フライロッドの方が良かった」などと斉田さんに愚痴を溢していると、「福ちゃん、餌竿貸そうか?」と、見かねた斉田さんが竿を渡してくれた。しかも目の前でブドウ虫を付けてくれるというサービス付き(笑) |
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毛鉤には出てくれなかった・・・。
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そんな斉田さんは既に数匹のイワナを釣り満足したのか、餌竿を振る僕の目の前でビールを開けツマミを取り出してプチ宴会を始めてしまった。(笑)
結局僕も釣れなかった為、2人でビールを飲みながらコンビニのおにぎりとパンで簡単な昼食を取る。
その間に目の前の淵でブドウ虫付きの置き竿をしたが、残念ながらこの竿にイワナは出てくれなかった。斉田さんの話によるとこの場所は以前に尺2寸が出たポイントらしいのだが。 |
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渓でのビールは格別だ。
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ビールと食事で僕の釣り欲も心持ち復活の兆しが出てきた。
聞くと魚の反応は様々で、この時期にしては食い気のある魚も多く、流れのある場所でも釣れたそうだ。こんな話に勇気付けられ、再度斉田さんにブドウ虫を付けてもらい(笑)上流へ向かう。優しいなぁ!
そうこうするうちに、僕の竿(ブドウ虫付き)にもアタリがあった。念入りに食い込ませた後、穂先が数ミリ沈み込み止まった瞬間に強くアワセを入れてみた。すると、ブルブルと魚の脈動を感じる事ができた。
アタリも引きも弱かった為小さい魚かと思ったが、引き上げてみると中々のサイズだった。僕にとって本年初のイワナは、この日一番の9寸イワナであった。 |
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今年の初岩魚は9寸!
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その後、餌竿を斉田さんに返してテンカラで釣り上がる。
斉田さんは更に数尾を釣り上げ、僕の毛鉤入れの片隅にあった最後のビーズヘッド付毛鉤にも何とか1匹が食いついてくれた。
しかし、上流部は氷と雪に閉ざされてしまい竿を振る事ができなかった。
毛鉤釣りとして解禁を果たしたかと聞かれれば、個人的に首を傾げてしまう状況であったが、晴天で風も無く穏やかな谷で、居着きのイワナを見る事が出来ただけで良しとしようと思う。
渓は氷と雪に閉ざされていたが、そこを照らす光は間違いなく春の陽気であった。 |
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また良型!
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ビーズヘッドで何とか釣れた。
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春の日差しに輝く渓。
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