HOMEBACK
  大井川の渓
  2017/05/03-05



  高橋、平澤、斉田、宮川、高野





Text & Photo   : 高野

待ちに待ったゴールデンウィークがやってきた。
今年は2日を有休にしたので、なんと9連休だ!
社会人になって30年以上になるが、GWに9連休は初である。
休みになったらあれして、これしてと、やりたいことは山ほどあるが、やっぱり一番の楽しみは源流釣りだ。

今年も解禁直後から、GWはどこに行こうかと斉田さんたちと行先を練ってきた。
去年は記録的な小雪だったので豪雪地帯の秋山郷に入れたのだが、今年はそれなりに降ったみたいから無理だろう。
となるとやはり雪の少ない静岡県の大井川水系しかないだろう。
なので、2年ぶりの大井川への源流行が決定した。

大井川は南アルプスの急峻な山々を縫って流れる大河だ。そのため並走する車道も狭いところが多く、車止めまで行くのが長い長い。
しかし時間をかけてでも行く価値のある川なのだ。

今回のメンバーは年齢の高い順に5人が参加することになった。
一番若い宮ちゃんは40代だが、他は全員50代。
渓道楽のオジサンチームでの釣行だ。
いつもなら仕事が終わってからの出発なので22時くらいだが、2日はみんな休みなので明るいうちに出発できた。
しかし、早く出たにもかかわらず車止めに着いたのは夜中2時くらい。
首都高から東名を抜けて東京を脱出するのに、大渋滞。遅く出てもあまり変わらんかったも・・・。

お約束の宴会後に仮眠。だが、またしても寒くてよく眠れず。
やっぱり山の夜は冷える・・・。

今回は渓まで約5時間ほどだろうか。登山道に入りいきなりの急登に心臓バクバク、息が上がる。
やがて樹林帯を抜け尾根に出ると、雪をかぶった南アルプスの峰々が目に飛び込んできた。

あとは渓まで下るだけだ。長い歩きに膝が笑い出しそうだったが、どうにか目的の流れに到着。
テン場を見つけるのに少し手間取ったが、素晴らしく平らな適地にタープを張った。

晴れ渡った空。
今年のGWは天気に恵まれた。



























登山道に入り、最初の休憩。
みんなまだ余裕がある表情。


























道は急登となり高度を上げる。

























と思ったら、今度は下り。
登ったり降りたり。
平行移動しろや、道!

まあ、こんなもんか。
目指す渓は・・・
って山しか見えないぞ!

やっと渓に着いた。

さて、今回は2泊なので本格的な釣りは明日にまわし、今日は軽く偵察程度にしておこう。
上流組に斉田さん、平澤さん、宮川さん。下流組に高橋さんと私。
時間を決めてテン場に戻ることにして別れた。

私たち2人はいったん下って釣り上がってくることになるので、しばらくは竿を出さずに歩くことにした。
幸い河原は広く流れから離れて歩けた。源流とはいっても、なるべくプレッシャーを与えたくないから幸いだった。
以前に本で読んだのだが、じっくり釣ると250m釣り上がるのに1時間程度掛かると書いてあった。
テン場には1時間後に戻るつもりだったから、20分も歩けばいいだろう。
そう考えながら高橋さんと河原をスタスタと歩き下っていた。
河原は広くてずっと先まで見通せる状況だったので、どの辺りまで行こうかなと遠くを見ながら進んでいると、何か真っ黒な物体が目に飛び込んできた。
「ん? 岩・・・にしては黒すぎだよな。なんかツヤツヤしてる気もするし。」
まさか、もしかして、あれは・・・
「高橋さん! あれ熊じゃないすか?」
「え〜、どれ?」
「ほら、あそこ。ずっと先の河原の真ん中! 動いてるよね?」
「あ! 熊だ、熊!!」

数百メートル先、河原の真ん中に何本か木が生えている場所。その木に登っているのだろうか。
黒い物体は我々に気付いているのかいないのか、夢中になって何か食べているように見える。
ときおり体を起こすような仕草をするが、そのときに首周りに白い月の輪が見えた。
私はカメラを取り出すとズームを最望遠にしてシャッターを切った。
しかし、ファインダーの中の熊はあまりにも小さく見えた。いつも釣りに持ってくるズームレンズは、それほど望遠側が長くない。
(あー、もっと大きく撮りたい! こんなチャンスはそうあるもんじゃないのに・・・。)
でも、「無謀な釣り人 写真を撮るために熊に近づき重傷!」なんてニュースになったら困る。
心の中では、(あの大岩に隠れて撮ればもっと接近できるのに・・・)という思いもあったが、もしこっちに来られても
逃げきれないので諦めた。

熊に山に帰ってもらおうと高橋さんと一緒にホイッスルや指笛で警告するも、まるで動く気配なし。
しかたがないのでここから釣り上がることにして、高橋さんに竿を出してもらった。
私は熊がこっちに来るとヤバいので、しばらく監視。
すると2頭の鹿が現れてピーっと鳴いた。熊はそちらを気にして顔を上げたようだった。
じっと見守っていると熊はノソノソと動き出した。
(こっちに来るなよ・・・)
来たらどうすると考えていたら、鹿とは反対の右岸へと歩き出し、熊の姿は見えなくなった。
見えないとこ歩いてこっちに来ないだろうなと警戒してしばらく下流を見ていたのだが、熊は山に帰ったようで一安心。
これで釣りに集中できる。

高橋さんと二人で足取りも軽く下っていくと・・・
ん? あの黒いのなんじゃらほい。

ズームアップ!
やっぱ熊だ!!
どうするん。
これ以上先へは行けないよね。

熊を気にしつつも釣り始める高橋さん。
大岩ゴロゴロの渓相。
でも広くて釣りやすい。
熊さんは、どこかへ行ってしまわれたようだ。

























おー!
キタキタ、イワナちゃん。
パーマークくっきりの色白美人。



























また釣れたし。
今度のは黒いぞ。
8寸くらいあるな。


釣り始めてすぐに高橋さんに1尾目。落差は無いが小さな落ち込みが続き、そこそこポイントはある渓相。
その落ち込みから9寸ほどある良型のイワナが出た。
周りの岩との保護色なのか、白っぽいイワナだった。
続けて高橋さんに来たのは、今度のはサビの残った黒いイワナ。これも8寸以上ある良型だ。
ちょっと釣っただけで続けて良型が来て、ご機嫌の高橋さん。
ただ、この後苦戦することに。
アタリは頻繁にあるのだが、鉤がかりしないのだ。
アワセが早いのかとアタリがあってからしばらく待ってもダメ。どうやら小さいのがエサをつついている様子。
それでもじっくり釣って、それぞれが10尾程度のイワナを上げることができた。

熊のこともすっかり忘れて釣りに夢中になっていたら、待ち合わせ時間が過ぎていた。
テン場はすぐそこなので、最後は飛ばして無事に到着。

一足先に斉田さんたちは戻っていた。
すぐさま熊の話をすると、「いいなぁ、俺も見たかったなぁ。」だって。
鉢合わせは勘弁だけど、遠くからなら見てみたいのだ。

さて全員集合したところで、渓で冷やしたビールでまずは乾杯!

そして焚き火を熾して宴会スタート。
ゆっくりと日が暮れていくこの時間が、とても楽しい。
ザックの中から次々と食材が出てきて、みんなで食べきれないほどの料理を作り、まったりと過ごした。

カンパーイ!


おっ、デューク更家さんも、おつかれ〜(笑)
今宵も焚き火を囲んで夜が更ける。

明けて翌日。今日は全員で上流に釣り上がる。
昨日偵察した斉田さんによると、水量も多く渓相もかなりいいとのこと。
魚影も濃いようで期待が持てる。
ただ型はそれほどでもなく、8寸程度までらしい。

昨日釣ったところまでは飛ばして歩き、その先から順番に竿を出していくが、釣れる釣れる!
8寸程度までのヒレピンイワナが入れ掛かりだ。
5人で釣ってこれだから、一人だったら前に進めない?
渓相は昨日釣った下流と違って、大岩ゴロゴロの山岳渓流の様相。
遡行するのにちょっと面倒な気もするが、高巻きするような場所もそれほどなく、竿も伸ばしたままでほとんど大丈夫だった。
みんなの笑顔に向けてシャッターを切るのが楽しい。

上流に向かうにつれだんだんと型も良くなってきた。
9寸クラスも混じりはじめるが、ポイントごとに釣れるのであまり進めない。
どのくらい来ただろうか。そろそろ戻る時間になろうとしていた。
5人全員がツ抜け、ハリ掛かりしなかったのも入れたらダブルツ抜けくらいは楽にいっている。
久々に全員が満足できた釣りだった。

これがシーズン通していつもなのかはわからない。
GWという初期だったからかもしれない。イワナ釣りはかくも難解な釣りなのだ。
今度は別の時期に来てみたいと思わせる渓だった。

広くて平らな最高のテン場。
テン場上流はずっとこんな感じで、落差が出てくる。

一級のポイントが次々と。

一番手は宮ちゃん。


高橋さんが掛けた!
いいね〜!


もちろん、斉田さんだって釣るよ。
続けてヒット!
こいつもアベレージサイズの8寸だ。
























大きんじゃね?
宮ちゃんサイズか?


























9寸だね。


もちろん私も。
またきてるみたいよ。
全員入れ食いだね。

もうじゅうぶん釣ったから、戻りますか。
最終日は、お約束のテン場記念写真
帰り道は途中まで川通しで。
熊のレストラン見学コース。
ここに登って食事してたようだ。

新芽が食べられてる。

デカイのいそう・・・。

また来るよ。

ミツバツツジ

大井川にも遅い春が来た。

天気にも釣果にも恵まれた、素晴らしい3日間だった。
 HOMEBACK